会見拒否が話題を集め、トーナメントディレクターの手厳しいコメントもあり大会と軋轢を生んだ感のある大坂なおみは、皮肉にも、2021年全仏オープンテニス・センターコートの開幕戦を務めた。入場者数を規制した客席は大半が空席だが、それでもファンの拍手は、十分にスタジアム中に響く。
軽く手を振り観客に応じる彼女は、いつものようにヘッドフォンで耳を覆い、外界の音を遮断しているようだった。記者席でキーボードを叩く各国のメディアは、彼女がどのようなプレーを見せるか、そして試合後にオンコートインタビューを受けるかなど、いつもとは異なる関心事項を抱き、彼女の姿を注視する。
コイントスに勝った対戦相手のティグは、リターンを選択した。自らのサービスで試合をスタートさせた大坂は、リターンをフォアで深く打ち返すと、浅くなった相手の返球を、迷わずバックで逆クロスに叩き込む。この日39本ものウイナーを決めた大坂の、開幕戦の口火を切るポイントも、ウイナーだった。
「私が突然、守備の上手な選手になったり、ネットの1メートル上を越していくボールを打てるようになるわけではない。基本的に私は攻撃的な選手なのだから、その利点をクレーでも生かしていきたい」
全仏オープンを控えた前哨戦のイタリア国際で、大坂はクレーでのプレーにつき、そのように口にしていた。
もっとフットワークを良くする必要があるのでは? クレーでの正しいショット選択ができていないのでは?
会見で問われてきたそれらの質問や疑念に対し、ローランギャロス開幕戦の大坂のプレーは、自らの答えを突きつけるようだった。
クレーの定石である、高く跳ねるスピンショットを使うことなく、フラットに低く速い強打を放つ。つなぎのボールや、ドロップショットなどもない。1本でもラリーを短く済ませるべく、リスク覚悟で攻めているように見えた。
そのプレー内容を示す数字がある。
6-2で奪った第1セットで、大坂が獲得したポイントは32。そのうちの25ポイントは4本以下のラリーでつかんだものであり、さらに25のうちの14本を、ウイナーで奪っているのだ。
第2セットに入ると、大坂のプレーにティグも徐々に適応したか、タイブレークにもつれこむ競った展開となる。それでも、大坂の基本スタンスは変わらない。最終的には、全76の獲得ポイントのうち、"0~4ショット"で手にしたのは52。全体のポイントの68.4%を、4本以下の打ち合いで奪ったことになる。
ちなみにこの日、大坂対ティグ戦と似た6-2、7-6のスコアで勝利したポウラ・バドサの場合、"0~4ショット"が占めた獲得ポイントは58.6%。あくまで参考ではあるが、錦織圭のそれは54.7%だった。
初戦で見せた大坂のこの超攻撃スタイルは、果たして意図的に行なったものか。仮にそうだとして、あくまで相手との相性を考慮した選択だったのか。それとも今大会を通じ、このようなプレースタイルを貫いていくつもりなのか?
公約通り、大坂の試合後の会見は行なわれなかったため、真意を確かめることはできなかった。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】大坂なおみら、世界で戦う日本人女子テニスプレーヤーたち!
軽く手を振り観客に応じる彼女は、いつものようにヘッドフォンで耳を覆い、外界の音を遮断しているようだった。記者席でキーボードを叩く各国のメディアは、彼女がどのようなプレーを見せるか、そして試合後にオンコートインタビューを受けるかなど、いつもとは異なる関心事項を抱き、彼女の姿を注視する。
コイントスに勝った対戦相手のティグは、リターンを選択した。自らのサービスで試合をスタートさせた大坂は、リターンをフォアで深く打ち返すと、浅くなった相手の返球を、迷わずバックで逆クロスに叩き込む。この日39本ものウイナーを決めた大坂の、開幕戦の口火を切るポイントも、ウイナーだった。
「私が突然、守備の上手な選手になったり、ネットの1メートル上を越していくボールを打てるようになるわけではない。基本的に私は攻撃的な選手なのだから、その利点をクレーでも生かしていきたい」
全仏オープンを控えた前哨戦のイタリア国際で、大坂はクレーでのプレーにつき、そのように口にしていた。
もっとフットワークを良くする必要があるのでは? クレーでの正しいショット選択ができていないのでは?
会見で問われてきたそれらの質問や疑念に対し、ローランギャロス開幕戦の大坂のプレーは、自らの答えを突きつけるようだった。
クレーの定石である、高く跳ねるスピンショットを使うことなく、フラットに低く速い強打を放つ。つなぎのボールや、ドロップショットなどもない。1本でもラリーを短く済ませるべく、リスク覚悟で攻めているように見えた。
そのプレー内容を示す数字がある。
6-2で奪った第1セットで、大坂が獲得したポイントは32。そのうちの25ポイントは4本以下のラリーでつかんだものであり、さらに25のうちの14本を、ウイナーで奪っているのだ。
第2セットに入ると、大坂のプレーにティグも徐々に適応したか、タイブレークにもつれこむ競った展開となる。それでも、大坂の基本スタンスは変わらない。最終的には、全76の獲得ポイントのうち、"0~4ショット"で手にしたのは52。全体のポイントの68.4%を、4本以下の打ち合いで奪ったことになる。
ちなみにこの日、大坂対ティグ戦と似た6-2、7-6のスコアで勝利したポウラ・バドサの場合、"0~4ショット"が占めた獲得ポイントは58.6%。あくまで参考ではあるが、錦織圭のそれは54.7%だった。
初戦で見せた大坂のこの超攻撃スタイルは、果たして意図的に行なったものか。仮にそうだとして、あくまで相手との相性を考慮した選択だったのか。それとも今大会を通じ、このようなプレースタイルを貫いていくつもりなのか?
公約通り、大坂の試合後の会見は行なわれなかったため、真意を確かめることはできなかった。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】大坂なおみら、世界で戦う日本人女子テニスプレーヤーたち!