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【次代のエースに学べ】ウインブルドン4強入りのシャポバロフが放つ“打点を見ない”サービス<SMASH>

スマッシュ編集部

2021.07.17

サービスでは打点を見ることが重要視されるが、世界10位のシャポバロフはインパクト前から顔が前方に向けられている。写真:真野博正、(C)Getty Images

 男子テニス界の勢力図が「ニュージェネレーション」と呼ばれる20歳前後の若い選手によって塗り替えられようとしている。果たして彼らはどんなプレーを武器とするのか…。

 テニス専門誌『スマッシュ』では、今季撮影の最新連続写真をベースに「次代のエースに学べ!世界最先端のサービス」と銘打ち、元デ杯日本代表の辻野隆三氏にそのテクニックを分析してもらった。今回は、先のウインブルドンで4強入りを果たしたカナダの22歳、デニス・シャポバロフ(世界ランク10位)の登場だ。

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 グランドスラムに次ぐグレードの大会であるマスターズで、シャポバロフが初めて4強入りしたのが18歳の時(2017年)。ダイナミックなフォームから繰り出すハードヒットを武器に、デルポトロやナダルと言ったビッグネームを次々と倒した。

 当時と比べるとサービスのフォームはだいぶ変わったが、どんなショットでも卒なくこなすところは現在も変わっていない。

 彼のプレーを見ていると、身体の使い方のうまさを感じる。それは彼独自の使い方というか、持って生まれたセンスのようなもの。それがこの後に解説するサービスのフォームにも如実に表れている。その一つがインパクト時の身体の使い方だ。
 
 サービスでは「打点に視線を残せ」と言われるが、彼はインパクト前に頭を落として視線は前方にある。一般的には頭が下がると打点も下がり威力が半減するが、彼の写真を見ると打点を全く下げずにボールを捉えている。

 考えられるのは、彼の肩の可動域が広いため、インパクトに向けてまず頭が先に出て、その後から、肩→腕→ラケットが素早く出てくるムチのような運動連鎖だ。この動きを取り入れることで打点を下げずに強烈な弾道を生んでいると思われる。

 こういう動きはコーチが教えられるものではなく天性のもの。まさにニュージェネレーションの「型破りなサービス」と言っていいだろう。

【プロフィール】デニス・シャポバロフ
1999年4月15日生まれ。イスラエル出身。身長185cm。左利き。バックハンドは片手。テニスを始めた5歳から現在までコーチは母親で、19年からはM・ヨーズニーもチームに加わる。2016年ウインブルド・ジュニア優勝後にプロ転向。17年にはモントリオールのマスターズでデルポトロやナダルら大御所を破った。今年のウインブルドンでは4強入り。自己最高ランキング10位(7月12日付)

構成●スマッシュ編集部
※『スマッシュ』2021年6月号より再編集

【PHOTO】ハイスピードカメラが捉えた、シャポバロフの型破りなサービスの連続写真!