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国内テニス

女子テニスの井上雅が現役引退を表明。「プロの道を選んでよかった」に込められた様々な思い<SMASH>

内田暁

2021.09.23

今秋の全日本選手権を最後にプロ選手としての活動に終止符を打つことを決めた井上雅。写真:THE DIGEST写真部

今秋の全日本選手権を最後にプロ選手としての活動に終止符を打つことを決めた井上雅。写真:THE DIGEST写真部

「本当に、プロになったことは全く後悔してなくて。この道を歩んできてよかったと思っているので、そういう意味では本当にやりきったって思いますし、プロの道を選んでよかったなって思います」
 
 そう明言する彼女の声音や表情に、虚勢などの混じり気は一切ない。胸の内からごく自然に滑り出る、未加工な想いのようだった。

 今年10~11月開催の全日本選手権を最後に引退すると表明した、井上雅の言葉である。

「夢は叶えられなかったけれど、グランドスラムという夢に向かってずっと頑張ってきたことは、自分の誇りではありますし、そこは今後も自信を持って、『頑張ってきた』って言えることです」

 引退を控え語ったこの言葉こそが、彼女の12年のキャリアを、端的に物語っているかもしれない。

 最高ランキングは、2015年9月に達した275位。グランドスラム予選には、わずかに届かなかったキャリアではある。それでもコートに立つ限り、自分はグランドスラムに続く道に居ると信じられた。それはジュニア時代に、夢舞台をその目に焼き付け、空気を肌身で感じた原体験があるからだろう。
 
「夢」の言葉を口にした時、彼女が思い出すのはとりもなおさず、“テニスの聖地”の光景だ。
 
 芝の緑に映える純白のウェア。熱狂しながらも、どこか気品を感じさせる客席のファン――それはテニスに関わる者なら誰もが憧れる、もっとも格調高く華やかな空間。 “ザ・チャンピオンシップス”の正式名称を誇り、広くは“ウインブルドン”の名で知られる伝統の大会のジュニア部門で、井上は17歳の時にベスト4へと勝ち上がった。

「またここに戻ってきたい」
 
 その純粋な情熱が、井上をコートへと駆り立て続けた原動力だ。

 もし、この時のウインブルドンJr.で、ベスト4に行ってなければ――?

 誰しも人生には多くの“if”が存在するが、とりわけ勝負の世界に生きるアスリートには、その瞬間が明瞭に浮かび上がりやすい。

 井上にとってはこのベスト4こそが、人生の大きなターニングポイントだ。それは単に戦績面だけでなく、テニスと自身の関係性において……という意味でもある。

「前はテニスが嫌いでしたね。それこそ、ジュニアの頃とかは」

 やや意外なその言葉に、「なぜ」と問うと、彼女は次のように答えた。

「自分が好きでやってるっていう感覚がほんとになくて、ただやらされてるという感じだったので。テニスがない人生は確かにあり得なかったけれど、もうテニスしかないんだなって思うぐらい、結構テニスに追い込まれていた。嫌いって言ったらちょっとあれですけど、好きではなかったですね。もう試合をするしかないって感じでした」
 
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「プロへの決断」井上が初めて能動的にテニスを選ぶ時が訪れる…

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