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【伊達公子】“嘘“をつけるメディカルタイムアウトは、ルール変更で改善できる?<SMASH>

伊達公子

2021.10.01

手段を選ばすに勝とうとする選手は結構いると言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 トイレットブレークと同様に、テニスではメディカルタイムアウトについてもよく話題になります。今年の全米オープンでも2つのメディカルタイムアウトが注目を集めました。

 女子4回戦でクレイチコワが第1セットを取り、第2セットも4-0とリード。その後、ムグルサに追い上げられて5-6となった時に、クレイチコワがメディカルタイムアウトを取りました。

 このタイミングは、極力取ることを避けますね。どれほど体調が悪かったのかは、結局は本人しかわかりませんし、本当に体調が優れない状態ならしかたがないでしょう。しかし、あの試合の流れを左右する緊迫した場面でメディカルタイムアウトを取るのは、相手に対するリスペクトが欠けているとも見えるでしょう。結局はクレイチコワが勝っていますし、私がムグルサでも文句を言いたくなる状況です。

 この状況でメディカルタイムアウトを取るのはかなり勇気がいることです。ただ、女子選手の場合は、グランドスラムだけでなくツアーの1回戦からの試合を考えると、手段を選ばず、あの手この手を使って勝とうとする選手は結構います。
 
 私が北京の大会に出場した時、空気が悪くてめまい・頭痛・吐き気に襲われてメディカルタイムアウトを取ったことがあります。結局リタイアしましたが、この状態は相手にはわかりづらいので、嘘をつこうと思えばつけるわけです。

 メディカルタイムアウトを取ることについては、必要な時に最小限に留めましょうというぐらいしか言えませんね。ルールを作って改善できるなら、どんなルールになるのか想像もつきません。ウソ発見器ぐらいしか思いつきませんから(笑)。

 ルールという点で改善の余地がありそうだと思ったのは、女子決勝でのラドゥカヌの流血です。選手も審判もフィジオもルールに従って決定していき、結局メディカルタイムアウトを取ることになりました。でも、試合終盤の緊張が続く場面で、メディカルタイムアウトで流れを途切れさせるほどのことだったのかなと思います。誰が悪いわけでもありませんし、もしかしたら血に対する感覚も違うかもしれません。だから、何か改善できることがあるなら、変わっていくのも良いと思います。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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