国内テニス

車いすテニス、ジュニア、プロ、あらゆる立場の選手が同じコート上で戦う!『WJPチャレンジテニス』の型破りな魅力<SMASH>

内田暁

2021.10.27

車いすテニス、ジュニア、そしてプロ選手が一緒になってプレーする団体戦『WJP』が10月23日に開催された。写真=内田暁

「俺は子どもの頃から、ここで車いすテニスのレジェンド選手と練習試合して負かされて。『どうやったら勝てるんだ?』って悔しい思いしながら育ったんで、これが普通の環境なんです」

『WJPチャレンジテニスby BNPパリバ』の発起人の松井俊英は、明瞭な口調でそう言った。

 イベントを象徴する"WJP"の3文字は、Wheel chair(車いす)、Junior(ジュニア)、そしてProfessional(プロフェッショナル)の頭文字。それぞれの肩書を背負う選手たちが、時にダブルスパートナーとして、時にライバルとしてネットを挟み対峙したこのチーム対抗戦は、Diversity(=多様性)をテーマに掲げ、10月23日に開催された。

 ただ松井本人は、今さら"ダイバーシティ"という言葉を持ち出す必要もないほどに、多種多様な人々が同じコートに立つことを、日常としてとらえている。それは彼がテニスを始めた原点であり、今回のイベント会場でもある、千葉県柏市の吉田記念テニス研修センター(TTC)で見てきた景色に根差していた。

 東京パラリンピック金メダリストの国枝慎吾を輩出したTTCは、かねてより、車いすテニスのプログラムが充実した場として知られている。歴代の日本トップ選手たちが練習拠点とし、ジュニアたちと真剣勝負さながらの打ち合いを繰り広げるのも、ここでは普通の光景だった。

 松井も、車いすテニスの全日本チャンピオンに挑みながら、腕を磨いたひとりだった。
「俺がジュニアの頃、大森(康克)さんという、めっちゃレジェンドな選手がTTCに居たんです。仕事中の事故で足を切断したんですが、やんちゃというか、ちょっと口が悪い人で。弟も、試合で負かされて泣いてました」

 自身もやんちゃな笑みを浮かべながら、43歳のベテランは、少年時代を思い返す。その彼も今では練習時に、ジュニア選手相手に打つことも多い。

 子どもの頃から培ってきたこの日常的な感覚を、多くの選手や人々とも共有できれば……、そんなある種無垢な想いがイベント発足の源泉だった。

 昨年に続く開催となった今大会では、対戦カードやチーム編成に一層の多様性を持たせたという。1チーム9名編成の団体戦が基本の対戦構造で、両チームとも車いすテニスとジュニア、そしてプロの男女選手で構成される。ただ対戦カードは、同カテゴリーどうしとは限らない。ジュニア対プロ、ジュニアとプロが混在するダブルス、さらには"ニューミックス"と呼ばれる車いすと健常者がペアを組む混合ダブルスなど、多様なケミカルや色彩が生まれる編成や顔合わせが多く実現した。

 それらの多彩な対戦カードのなかでも、松井がとりわけこだわったのが、車いすテニスジュニア選手と健常者ジュニア選手の真剣勝負だ。
 
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車いす選手と健常者による一対一の真剣勝負も実現