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海外テニス

「自分のピークは20代後半」有言実行となった全豪オープン。ダニエル太郎は独自のテニス人生を歩む「自分は芸術家だ、と信じたい」<SMASH>

内田暁

2022.01.23

プレースタイルの変更にも取り組み、全豪オープンでは自身初となるグランドスラム3回戦進出を果たしたダニエル太郎。(C)Getty Images

プレースタイルの変更にも取り組み、全豪オープンでは自身初となるグランドスラム3回戦進出を果たしたダニエル太郎。(C)Getty Images

 191センチの長身に乗る小さな顔は、10代の頃とあまり変わらぬあどけなさを残す。短く切り揃えた髪が、童顔をさらに若く見せていた。

 ただそんな彼も、今年の1月27日で29歳を迎える。初めて立つ全豪オープン3回戦の舞台でネットを挟む相手は、20歳にして世界の10位につけるヤニック・シナー。このイタリアの俊英を筆頭に、昨今の男子テニス界では、20歳前後の大躍進が相次いでいる。その趨勢のなかではダニエルも、年齢だけを見れば、ベテランの領域だ。

 アメリカに生まれ、日本とスペインで育った多様な文化的背景にも根差す資質だろうか。ダニエルは物事を多様な視点でとらえ、咀嚼し、言語化する能力に長けた青年だ。そんな彼だからこそ、これまでにも個性的で、時に哲学的ですらある“テニス人生観”を数多く語ってきた。とりわけ印象に残っているのが、22歳の頃に口にした長期的ビジョンである。

「まだ身体が出来ていないので、毎年2キロずつ筋肉をつけて、5年後に10キロ増やしていたい。そのころには、テクニックや経験もそろってくるだろうから」

 身体が資本のアスリートにとって、5年という年月は、長い。ましてやテニスプレーヤーは、グランドスラムという究極の舞台を、年に4度のハイペースで戦うのだ。だからこそ多くの選手は、早急に結果を求めやすい。
 
 ところがダニエルは若い頃から、「自分のピークは20代後半。もしかしたら30歳を超えてから来るかもれない」と、どこか悠揚と構えていた。そして自身の言葉通り、28歳となった今、彼は確実に新たなステージへと歩みを進めている。
 
 ダニエルが、期は満ちたとばかりにスベン・グレーネフェルトをコーチに招いたのは、27歳を控えた2019年末のことだった。

「僕は、あと10年くらいはテニスをできる自信はある。ただ27歳になり、タクティク(戦術)やテクニックを改善する一番のチャンスは今かな、と思ったんです」。実際にダニエルは、新コーチと共に多くの変革に取り組んだ。

 ラケットを短くし、早いタイミングでボールを捉えることで、相手の球威も生かしボールを飛ばす技術を習得。その上で、ボールを左右に動かし、チャンスを見ては前にでる攻撃的なプレーを志向する。

 今大会で大きな結果を出したために注目を集めたが、変化は昨年から見られていた。目指すテニスが一層の精度で噛み合い、結果がさらなる自信と勝利を生んだのが、今回の躍進の真実だ。
 
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