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海外テニス

抱えていた“疑念”を払拭したダニエル太郎。マリーに惜敗するも「本当に近いところにいると思う」<SMASH>

内田暁

2022.03.12

あと一歩のところでマリーに敗れたダニエルだが、要所で攻めの選択をした結果だ。「自分に誇りを持って前に進んでいく」と語る。(C)Getty Images

あと一歩のところでマリーに敗れたダニエルだが、要所で攻めの選択をした結果だ。「自分に誇りを持って前に進んでいく」と語る。(C)Getty Images

 1月の全豪オープンテニスでは圧巻のストレート勝利を収め、わずか2週間後の再戦では、リベンジを期する相手の攻撃と気迫に圧倒された。

「メルボルン(全豪)で勝ったのは、まぐれだったのかな……」

 敗戦後に心をよぎったその疑念に答えを示す機会は、幸運にもというべきか、引き寄せるかのように訪れた。“第5のグランドスラム”と称される、BNPパリバ・オープンの1回戦。予選を突破したダニエル太郎がメインドローで飛び込んだのは、アンディ・マリーと当たる枠だった。

「彼にはメルボルンで勝って、ドーハで負けた。自分が勝つチャンスを見い出せるか、今日の試合はテストでもあった」

自分の実力と現在地を測るうえでの、試験的な意義をも投影した試合。その一戦にダニエルは、明確なビジョンを持って挑んでいた。

「僕がボールを動かす方でないと、勝つチャンスはないなというのはわかっていた。最初から、自分からポジションを上げて押していこうと思っていた」

 それは直近の対戦で、「気持ちで引いてしまった」との反省があったからこその判断。勝利と敗戦の両方を経験して気付いた、かけがえのない未来への布石だった。
 
 ダニエルのプラン完遂への決意は、試合開始直後のコートにめいっぱい描かれる。ベースラインから下がらず、深く、なおかつ広角に打ち分けラリーを支配するのは、ダニエルの方。それも遮二無二攻めるのではなく、理詰めの配球で押し込み、時にしれっとネット際にドロップショットを沈める。

「メルボルンの時よりも、もっと良いプレーで完全に相手を上回れた」と自画自賛のパフォーマンスで、ダニエルが第1セットを6-1で先取した。

 だが第2セットでは、マリーが「適応して、僕を崩しにきた」と感じたとダニエルは言う。

 先んじて攻めるようになったマリーは、短いボールも使いながら、ダニエルのリズムと打点を狂わせていく。ダニエルのミスが増えたこともあり、第2セットはマリーの手に。それぞれのワンサイドゲームだった過去2戦のダイジェストのような展開で、セットを分け合った両者。そして今季3度目の対戦は、第3セットへと突入した。

 雌雄を決するファイナルセットで、先に打ち合いを支配したのは、ダニエルだ。攻め込みボレーを決めたかと思えば、逆に相手を前に誘い出し、パッシングショットを叩き込みもする。第1ゲームをブレークし、その後に追いつかれるも流れダニエルにあるまま、ゲームカウント4-4の局面を迎えた。
 
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