このゲームでサービスを打つ時、マリーは観客の動きが気になり、セカンドサービスでトスをやり直す。
マリーの心の乱れを察したダニエルは、「今が攻め時。特に追い風だから、リスクを取って攻めよう」と自分に言い聞かせた。前に踏み込み、やや甘いセカンドサービスを、高い打点で捉えストレートに叩き込む。鮮やかなリターンウイナーを決められたマリーは、直後のラリー戦でもミス。ダニエルに、マッチポイントにも近いブレークチャンスが訪れた。
ここでもマリーがファーストサービスをミスした時、ダニエルの脳裏に、2ポイント前のリターンウイナーのイメージがよぎったという。その場面と同様に、「ブレークポイントの時にも、またフォアに回り込もうと思った」と後に彼は振り返った。だがマリーのサービスは、今度はフォアサイドに放たれる。
「それでタイミングずれちゃったので。ただ普通だったら、あのボールは入れにいけたと思う。あそこで決めたいという思いがあったから、身体が引いて、フレームに当たっちゃったところもある」
結果的にこのチャンスを逃したダニエルは、やや気落ちしたと認める。
続くゲームでは、最初のポイントでスマッシュをミスし、焦りに拍車が掛かった。最後も、フォアがややフレームショット気味になり、このゲームを……つまりは、試合そのものを取りのがす。
もし、あのブレークポイントで、リターンを確実に入れにいってたら――?
そんな仮定を、考えもしただろう。それでも彼は、「そういうのも駆け引きだと思うので」と、穏やかに笑った。
試合後のダニエルは、「今はまだ負けたばかりなので、悔しい」と率直な思いを吐き出す。ただ、戦前に抱いていた、「メルボルンで勝ったのは、まぐれだったのかな」の疑念は、払拭できたのではないか?
その問いに彼は、「絶対にそうだと思います」と即答した。
「良い試合で勝てて、良い試合で負けてもいる。マリーと3か月で3回もやっているのは、自分をその地位に持っていけたから。こういう試合に、これからもっと勝っていけるようにしたいけれど、でも本当に近いところにいると思うので……」
そこまで言うと、彼は少し言葉を切り、自身を肯定するように続けた。
「うん。自分に誇りを持って、前に進んでいきます」。
【BNPパリバ・オープン男子シングルス1回戦】
ダニエル太郎● 6-1、2-6、4-6 〇アンディ・マリー
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】全豪OPで快進撃を演じたダニエル太郎の厳選フォトギャラリー
マリーの心の乱れを察したダニエルは、「今が攻め時。特に追い風だから、リスクを取って攻めよう」と自分に言い聞かせた。前に踏み込み、やや甘いセカンドサービスを、高い打点で捉えストレートに叩き込む。鮮やかなリターンウイナーを決められたマリーは、直後のラリー戦でもミス。ダニエルに、マッチポイントにも近いブレークチャンスが訪れた。
ここでもマリーがファーストサービスをミスした時、ダニエルの脳裏に、2ポイント前のリターンウイナーのイメージがよぎったという。その場面と同様に、「ブレークポイントの時にも、またフォアに回り込もうと思った」と後に彼は振り返った。だがマリーのサービスは、今度はフォアサイドに放たれる。
「それでタイミングずれちゃったので。ただ普通だったら、あのボールは入れにいけたと思う。あそこで決めたいという思いがあったから、身体が引いて、フレームに当たっちゃったところもある」
結果的にこのチャンスを逃したダニエルは、やや気落ちしたと認める。
続くゲームでは、最初のポイントでスマッシュをミスし、焦りに拍車が掛かった。最後も、フォアがややフレームショット気味になり、このゲームを……つまりは、試合そのものを取りのがす。
もし、あのブレークポイントで、リターンを確実に入れにいってたら――?
そんな仮定を、考えもしただろう。それでも彼は、「そういうのも駆け引きだと思うので」と、穏やかに笑った。
試合後のダニエルは、「今はまだ負けたばかりなので、悔しい」と率直な思いを吐き出す。ただ、戦前に抱いていた、「メルボルンで勝ったのは、まぐれだったのかな」の疑念は、払拭できたのではないか?
その問いに彼は、「絶対にそうだと思います」と即答した。
「良い試合で勝てて、良い試合で負けてもいる。マリーと3か月で3回もやっているのは、自分をその地位に持っていけたから。こういう試合に、これからもっと勝っていけるようにしたいけれど、でも本当に近いところにいると思うので……」
そこまで言うと、彼は少し言葉を切り、自身を肯定するように続けた。
「うん。自分に誇りを持って、前に進んでいきます」。
【BNPパリバ・オープン男子シングルス1回戦】
ダニエル太郎● 6-1、2-6、4-6 〇アンディ・マリー
現地取材・文●内田暁
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