海外テニス

大坂なおみの心を救ったセラピストの助言。欠けていた最後のピースとして「彼女をチームに加えたい」<SMASH>

内田暁

2022.03.24

マイアミ・オープン1回戦に快勝した大坂なおみ。試合後の会見では、セラピストの助言によって立ち直れたことを打ち明けた。(C)Getty Images

 一つの野次に心砕かれ、涙を流しコートを去った「BNPパリバ・オープン」から、10日後。大坂なおみは、マイアミ・オープン初戦のコートに立っていた。

 現在の世界ランキングは77位。ワイルドカード(主催者推薦)での出場ながら、センターコートに試合が組まれたことが、彼女の知名度と注目の高さを物語る。

 対戦相手は世界96位で、アメリカの大学テニスリーグ出身のアストラ・シャルマ。強烈なサービスとフォアハンドが武器ではあるが、まだまだ粗さも目立つ選手で、大坂が持てる力を発揮すれば、さほど難しい相手ではない。

 ただ何かの契機で一つほころびが生まれると、そこからダムが決壊するように、突如として崩れる可能性もあるのが、今の大坂だ。はたして、10日前の痛手から立ち直れているのか――? 観客やメディアが、コート上の彼女に注ぐ視線には、そのような関心も含まれていただろう。
 
 そうした疑念を、彼女はプレーで払拭する。力量感あるサービスで1ポイントも落とさず自分のゲームをキープすると、2ゲーム目でいきなりシャルマのサービスをブレーク。相手のセカンドサービスに対しては、リターン位置をグッと上げてプレッシャーをかけ、次々にリターンウィナーを叩き込む。それは大坂が、戦前から描いていたプランだった。

「リターンから攻めるのは、全豪で負けた試合の反省があったから。あの試合ではリターンで弱気になることがあったので、ミスをしても押し込んでいこうと思っていた」

 その意思を貫いた大坂は、両セットともに序盤のリードを守り切って、6-3、6-4の手堅い勝利。試合後のオンコートインタビューでは、「ここは私のホームトーナメント。ここの近くで育ったし、いつも来るのが楽しみ」と笑顔で語り、ファンの歓声を呼んだ。

 試合後の大坂は、今日のプレー中の心境を聞かれて、「今日はかなり良い」と応じた。

「インディアンウェルズ(BNPパリバOP)で起きたことを振り返った時、実は私はキャリアの中で、野次られたことがないことに気付いた。ブーイングはあったけれど、自分に向けて叫ばれたことはなかったので、訳がわからなくなってしまった」
 
NEXT
PAGE
進むべき道を示してくれたセラピストの存在