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【伊達公子】引退時期を決める難しさ。理想は自分の意志での決断だが、私の場合は疲れ果てていた<SMASH>

伊達公子

2022.05.06

「私の場合は2回とも理想的な引退ではありませんでした」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 選手にとって引退は避けられないものです。以前はテニスの選手生命は平均的に10年ぐらいと言われていました。18歳ぐらいからツアーを回り始めて、だいたい30歳前ぐらいになると、引退後のことを考え始めていたと思います。
 
 若くて突っ走っている良い状態の時は、思考回路が引退という方向に向きません。10年ぐらいして、精神的にも身体的にも疲れてきた時に引退ということを考え、それにランキングが重なってきます。
 
 テニスはランキングで出られる大会が変わってくるため、1つの目安としてグランドスラムの本戦にいられるか、いられないかは大きなポイントです。「もう1年やってみて、戻れればいいし、戻れなければ辞めよう」という考え方をする人もいるでしょう。やはり、ITFツアーからもう1度這い上がるのは、相当エネルギーがいるので。
 
 ランキングが落ちたからというのも望ましい引退の方法ではありませんが、一番嫌な引退はケガですね。ベストな引退は、ある程度キャリアを積んで、自分の意志で辞められることでしょう。
 
 ただし、自分の意志となると引き際が難しいところではあります。今は賞金やホスピタリティもいいですから、人間なので欲が出てきますからね。そこでタイミングを逃してしまうと、ずるずると進んでしまい、何を基準に引退を決めたらいいのか、わからなくなる状態にはまります。
 
 理想的な引退で思い浮かぶのは、イタリアの女子テニス選手のペンネッタです。2015年全米オープンで33歳6カ月にして初のグランドスラム優勝を果たし、その優勝スピーチで引退を宣言、その年の最終戦がラストマッチになりました。これは、潔くて、カッコいい引退でした。
 
 私の場合を振り返ると、1回目も2回目も理想的な引退ではありませんでした。1回目はオフコートでもメディアに追いかけられることもあり全てのことに疲れ果てていて嫌気がさしていました。でも試合をすると勝つというぜいたくな悩みで、どうしていいかわからない状態でした。そこにルール変更があって背中を押された感じです。
 
 2回目はケガが原因でした。全豪オープンの時、オフィシャルドクターの女医さんにサードオピニオンを聞きに行ったら、ドライに言い放たれた言葉に色々な思いが溢れてきて、「見返してやる!」と思って全豪OP本戦出場を目指しましたが、夢は叶いませんでした。
 
 引退は誰もが決断しなくてはいけないことです。その決断方法はそれぞれですが、少しでも自分が納得できるものであってほしいと願います。
 
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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