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かつての悪童マッケンローが問題行動の目立つテニス界へ提言!「選手が感情を出すことは良いことだ」<SMASH>

中村光佑

2022.05.20

かつて悪童と呼ばれたマッケンローはコート上の危険行為には否定的だが、選手が感情をあらわにすることは「良いこと」と考える(写真は1982年当時と現在のマッケンロー))。(C)Getty Images

 四大大会で7度の優勝を誇る男子テニス元世界ランク1位のジョン・マッケンロー氏(アメリカ/63歳)が、ブラジルのスポーツ専門メディア『UOL Deporte』のインタビューに登場。コート上で選手が感情をあらわにすることについて「常にそうした方がいいだろう」と自身の見解を示した。

 サーブ&ボレーの伝説的名手として知られ、1970年代から80年代にかけて活躍したマッケンロー氏。数々の輝かしい功績を残してきた一方、怒りのあまりにラケットを投げる、審判に暴言を吐くなど問題行動も多く見られ、テニス界では「天才という名の悪童」とも称されていた。

 時代に関係なく試合中に感情を爆発させる選手は男女を問わず数多く存在するが、そんな中でここ最近は特に男子テニスにおいて危険行為が目立つようになっている。

 一例を挙げると2017年のデビスカップ(国別対抗戦)では、デニス・シャポバロフ(カナダ/現15位)が観客席へ放ったボールが主審の左目に直撃し、失格となったことがあった。

 20年の全米オープン4回戦ではプレーがうまくいかないことに苛立ちを募らせていた現世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が誤って女性線審の首元にボールを当ててしまい、失格処分を受けたことは記憶に新しい。

 そして今季は2月のメキシコ・オープンで世界3位のアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)がマルセロ・メロ(ブラジル)とのペアで出場した男子ダブルス1回戦で、ライン際を捉えた相手のショットに対する主審のイン判定に激怒。そのまま敗れると、怒りに任せてラケットで審判台を何度も殴打するという暴挙に出て、ファンの間でも衝撃が走った。
 
 相次ぐ男子テニス界での選手の危険行為についてはマッケンロー氏でさえも懸念を隠せないようで、「個々のケースを見なければならないが、今の男子選手はひどい」と厳しいコメント。

 続けて「ジョコビッチの件はシャポバロフの時と同じように事故のようなものだったが、バカなことをしたと思う。あのようにイライラしながらボールを打っていれば、トラブルばかりが目についてしまう」

「ズベレフは何を思ってラケットで審判台を何度も殴打したのか。頭が真っ白になってしまったのか」とも述べた。

 それでもマッケンロー氏はコートマナーが悪いと言われる現代の選手と現役時代の自分を比較し、「(同じく問題児と呼ばれた)コナーズやナスターゼ、そして俺はもっとひどかった。まるで精神病院の患者のようだったよ」と自虐的に語る。

 だからこそマッケンロー氏は「うまくやっていく必要はある」と前置きしつつも、「今の選手たちが罰せられるべきでないとは言わないが、選手たちが感情を表に出すのは本当に良いことだと思う」として、各プレーヤーがありのままの姿を見せることには好意的に捉えているという。

 テニスは常に孤独で大きなストレスがかかるスポーツの1つだ。それだけに試合中のメンタルコントロールは困難を極める。だからといって問題行為に及んでいいわけではないが、限度を踏まえた上でストレスを発散することが重要なのは間違いないだろう。

文●中村光佑

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