海外テニス

連勝街道を突き進むシフィオンテクに挑む、中国の19歳ゼン・チンウェンとはどんな選手?<SMASH>

内田暁

2022.05.30

余裕の勝ち上がりを見せるシフィオンテク(左)、スペインを拠点にして成長したゼン・チンウェン(右)。(C)Getty Imges

 連勝街道を疾走する女子テニス世界1位のイガ・シフィオンテクは、1試合で8ゲーム落としただけで、周囲が「ひどいプレーだ」「綻びが見えた」とざわめき始めるまでになった。

 その声の背景にあるのは、圧倒的な優勝候補であるがゆえに、どこかに心のエアポケットが待っているのではという予測。あるいは、ここまでの彼女の勝ち上がりがあまりに一方的であるがため、そろそろ、熱戦が見たいという希望。

 それらの状況と人々の思惑が相まって、期待が高まっているのが、シフィオンテクが次に迎える一戦だ。

 対戦相手は、ゼン・チンウェン。昨年末から頭角を現し始めた、中国の19歳の新鋭だ。

 今季を126位で迎えたゼン・チンウェンにとって、自信と経験の礎となったのが、開幕戦のメルボルンサマーセット(WTA250)と、続く全豪オープンだ。いずれも予選から参戦し、サマーセットではベスト4に。グランドスラムデビュー戦となった全豪では、初戦を突破し2回戦でマリア・サッカリに敗れた。
 
 ちなみに、やや余談ではあるが、この2大会でゼン・チンウェンは本玉真唯と対戦し、いずれもフルセットの大接戦を制している。それらの試合でも発揮された、勝負所での集中力と攻撃的姿勢を貫くメンタリティが、彼女が有する大きな武器だ。

 わずか2大会目となるグランドスラム本戦の舞台でも、彼女はそれらの武器を存分に発揮している。2回戦では、元世界1位にして全仏優勝者でもあるシモナ・ハレップを逆転で破った。第3回戦は、アリゼ・コルネの棄権ではあったものの、センターコートのアウェーの空気を跳ね除け、自分のテニスに徹するのは並大抵での精神力ではない。

 4回戦で迎える世界1位との顔合わせにも、「とても楽しみにしているし、興奮している」と目を輝かせるが、語り口は冷静そのもの。浮かれる様子はまるでない。

 中国人選手の全仏オープンでの活躍といって誰もが思いだすのが、2011年のリー・ナの優勝だ。後続の中国選手のご多分にもれず、ゼン・チンウェンも、伝説的な先達の活躍に刺激を受けた一人。

「彼女は、私に夢を与えてくれた。中国人選手でもグランドスラムで優勝できるんだって」。8歳の頃に覚えた興奮を、19歳になったかつての少女は、まっすぐに口にした。
 
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