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【伊達公子】大会ディレクターとコミュニケーションを取る意識を持つと希望が叶う確率が高くなるかも<SMASH>

伊達公子

2022.06.03

故障明けはスペシャルランキングとWCを使う大会をうまく組み合わせていったと言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 故障で手術やリハビリをして、テニスツアーに復帰する時は、試合勘や自信を取り戻すために試合数をこなすことが一番大事です。ただし、故障前のランキング(※女子テニスの場合はスペシャルランキング)が使える期間が52週までと決まっているため、その間にランキングを戻さないといけないというプレッシャーがあります。

 女子テニスツアーから離れている期間が52週間以内だと、8大会でスペシャルランキングを活用できます(52週以上の場合は12大会)。スペシャルランキングを使って出場するからには、確実にポイントがほしいところです。そのため、復活してから、ある程度自信がついた時に使うなど、タイミングは重要です。

 スペシャルランキングは、大会のグレードによって使える回数に制限があるため、使っている時は勝負に出ている時です。そこで、1回戦でシードと当たって負けるとがっくりきますね。

 故障明けの時だけでなく、常に言えることですが、主催者推薦(ワイルドカード/WC)をうまく活用することもポイントです。私のセカンドキャリアの時、WCは本戦と予選で年間各3大会で使用でき、キャリアが10年以上になると数が倍になりました。WCは自分で申請し、大会側がその中から選んで決めます。
 
 私は2009年ウインブルドンの時にWCをいただいていますし、他にも数大会で出してもらいました。申請する時にプロフィールや現状を添えて送りましたが、「お願いします」と伝えるだけのシンプルなものでも構いません。要は、申請しないことには、大会側がWCを選ぶテーブル上にさえ乗らないので、まずは申請をすることです。

 あとは、トーンメントディレクターやスーパーバイザーと普段からこまめにコミュニケーションを取ること。私は日本から直接行く時には、日頃の感謝の気持ちとしてお土産を持っていったりもしました。最終的に決める権限を持っているのは彼らです。スタッフの1人としてではなく、人として接していることが、結果的にツアーの中で自分自身が回りやすくなることに影響しているのかもと思うことがなかったわけではありません。

 WCのことだけではなく、ケガをしているので遅いラウンドに入れてほしいとか、火曜日に入れてほしいとか、リクエストも伝えやすくなります。スケジュールについて議論したこともありました。それも、普段からコミュニケーションを取っていたからできたことだと思います。

 故障明けは、スペシャルランキングとWCをどの大会で使うのか、使わないのかのパズルのような状態になります。可能な限りルールを把握して、うまく活用していくことが、スムーズな復活につながっていくのです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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