海外テニス

本玉真唯、ウインブルドン予選突破!背中を押した地元ファンの大歓声に「泣きそうになった」<SMASH>

内田暁

2022.06.25

グランドスラム予選4大会目にして初めてつかみ取った本戦への切符。本玉真唯は感謝の気持ちを胸にウインブルドンの芝に立つ。写真=内田暁

 激闘を終えたばかりの対戦相手と握手を交わした後、彼女は客席の四方向に、丁寧に深々と頭を下げた。

「何も考えられないくらい嬉しいです。どういう感情なのかわからない。信じられない」

 コートを離れた後も、まだどこか夢心地のように、彼女は浮遊感のある言葉をつむぐ。

 本玉真唯が、ウインブルドンで予選を突破。グランドスラム予選4大会目の挑戦にして、初めてつかみとった、本戦への切符である。

 現在138位につけ、もう一息で100位圏内が見える本玉にとり、今回の"ランキングポイント無し"ウインブルドン予選への出場は、必ずしも簡単な決断ではなかった。

「悩んで、悩んで、悩んで……」と重ねる言葉に、葛藤の日々が滲む。

 出場を決断したのは、予選開幕の2週間前。

「ウインブルドンは一番大好きなグランドスラムなので、やっぱり出たい。とにかく楽しみたい」

 そんな純粋なる聖地への憧憬を原動力に、「ジュニア以来」のウインブルドンへと挑んだ。

 もっともウインブルドンと言っても、予選が開催されるのは本会場ではない。広大な芝生の平地にネットを張り仮設の客席を設けた、いわば"聖地の飛び地"である。

 それでも詰めかけた観客の人数が、この町でのテニス人気の高さを映す。本玉の試合のコートサイドでも、老若男女問わず多くのファンが試合観戦を楽しみ、良いプレーには惜しみない拍手を送った。
 
 予選決勝で本玉が対戦したルル・サンは、サウスポーを生かしたフォアの攻めと、ボールの跳ね際を叩く早い展開力を武器とする。

 試合立ち上がり、その相手のリズムと球質に、本玉は苦しめられた。

「受け身に回ったら、やられる」

 それが本玉の皮膚感覚。

 第1セットのゲームカウント2-5と後がなくなった時、本玉は覚悟が決まったかのように、反撃に転じた。

 相手のバックにミスが多いことを見逃さず、弱点にボールを集めた。芝を滑るフラットショットやスライスに食らいつき、走って走って打ち返し、チャンスと見るや迷わず攻めた。

 その本玉の真摯なプレーが、徐々に観客の心をとらえていく。結果的には、タイブレークでセットを落とすものの、本玉に落胆はなかったという。

「プレーは悪くない。追い上げた時のテニスをすれば、ポイントが取れると信じていた」

 その信じるプレーを、第2セットで本玉は立ち上がりから実践した。ネットプレーも増やし、自ら相手を崩し攻める局面を増やしていく。

 いずれも競ったゲームを制し、3ゲーム連取の好スタート。最後まで攻めの手を緩めることなく、6-2で本玉がセットを奪い返した。
 
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