海外テニス

奈良くるみが東レPPOでシングルス・ラストマッチを終え、「すごく幸せな時間でした」<SMASH>

内田暁

2022.09.18

シングルスの試合を終え「一つの後悔もない」と言う奈良くるみ。写真:スマッシュ編集部

 ライン際を狙いストレートに打ち込んだ打球がベースラインを越えた時、彼女のキャリアに、一端の終止符が打たれた。

 東レパンパシフィックオープンテニス予選の2回戦。イザベラ・シニコワに6-0、5-7、0-6で敗れた試合が、奈良くるみの、シングルスのキャリアラストマッチとなった。

 高い技術と知性が噛み合い、完璧ともいえるプレーを披露した第1セット。相手の追い上げに苦しみながらも競って競って、競り負けた第2セット。そして、強打とドロップショットを織り交ぜる相手のリズムを攻略しきれず、その背を捕えられなかったファイナルセット——。

 それは、14年に及ぶ彼女のプロキャリアを、ある意味で象徴するような一戦でもあった。

 小学6年生時に全国小学生テニス選手権を制すると、翌年には1年生にして、中学テニスの頂点に立つ。全日本ジュニアのタイトルも早くに手にし、さらには15歳にして世界スーパージュニア選手権も制する。そんな彼女が「天才少女」と呼ばれたのは、ごく自然なことだった。
 
 ただ本人は常に……少なくともプロになってからは、「自分には才能はない。がんばることが自分の取柄」と言い続けてきた。「昔は、天才少女って呼ばれてたりしましたよね、わたし」。小首をかしげ、不思議そうにつぶやくこともあった。

 シングルス最後の試合を終えた今、彼女は、自身のキャリアを次のように振り返る。

「順調に行っていたジュニア時期からプロに入って壁にぶつかったこともありましたが、自分でも本当によくやったなと思えるところは、壁にぶつかった時に、なんか楽しめること。頑張ることで楽しいと思えるように、すごくそこは、自分なりに色々な努力をしてきたので」

 基本的に楽観的な性格なので――と、目に涙をうかべながらも、彼女はいつものように明るく笑う。

「コートの中で一人で戦って、積み重ねが自分を上に上にと成長させてくれて。そこを感じさせてくれるのが、本当に楽しかったなと思います」。楽しいと言う言葉を、彼女は幾度も重ねた。
 
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