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海外テニス

セルビアの涙、ロシアの奮起…そして決戦直前!新生デ杯優勝チームは、スペインか?カナダか?

内田暁

2019.11.24

かつての優勝メンバーが揃ったセルビアは、ロシアにマッチポイントを握りつつも敗退。チーム全員が涙にくれた。(C)Getty Images

かつての優勝メンバーが揃ったセルビアは、ロシアにマッチポイントを握りつつも敗退。チーム全員が涙にくれた。(C)Getty Images

 手探りのラウンドロビンを終え、8カ国によるノックアウト方式の決勝トーナメントに入ってから、会場の“ザ・マジック”を満たす空気は、目に見えて大きく変わった。

 ポイントが決まるたびに、軽快な太鼓のリズムに乗せ沸き上がる大声援が、アリーナを震わせる。ラウンドロビン時には目立った空席も、戦う両国のイメージカラーに鮮やかに彩られた。

 開催国のスペインや、セルビアにアルゼンチンといったスポーツ熱の高いチームが揃ったことは、もちろん大きい。ただ第三者的な立場の観客たちも、トップ選手たちがほとばしらせる激情とチームへの想いに心揺さぶられ、熱い声援と拍手を送る。ラウンドロビンジ時には失われたかに見えた“デビスカップの精神”が、ザ・マジックに宿ったようだった。
 
 その熱と魂を、ノスタルジーとともに人々の胸に刻みつけたチームが、セルビアだ。2010年の優勝国は、ノバク・ジョコビッチを筆頭に、ビクトル・トロイツキ、ヤンコ・ティプサレビッチ、さらにはキャプテンのネナド・ジモニッチを含めた4人の優勝経験者が顔を揃えていた。

 この大会を最後に引退する、ティプサレビッチのためにも優勝を――。
 秘めた決意と団結力は、開幕前の会見時から、チーム全員の表情に刻まれていた。
 
 そのセルビアと準々決勝で戦うロシアは、カレン・ハチャノフとアンドレイ・ルブレフの若い2人が、ラウンドロビンで単複全ての勝利を手にしてきた。果たしてセルビア戦でも、シングルスを分け合い迎えた決戦のダブルスに、この2人が登場する。対するセルビアも当初のメンバーから変更し、ジョコビッチとトロイツキをコートに送り出してきた。出し惜しみも温存も一切なし。勝利への渇望のみが正面からぶつかりあった。

 突出した4人のストローカーによる強打が飛び交う熱戦は、ファイナルセットのタイブレークへと突入する。優勢に進めたのは、ジョコビッチの勇気あるポーチで先攻したセルビア。だが、マッチポイントでの決定的なボレーを、トロイツキが決めきれない。「あまりに気落ちし、その後は集中力を保てなかった」と認めるトロイツキは、ここからロシア・ペアの集中砲火を浴びる。つかみかけた勝利は、その手から無情にこぼれ落ちた。

 2010年のデビスカップでは、自らの勝利で母国に初のデビスカップをもたらしたトロイツキは、「みんなを失望させてしまった。神は、一度は英雄になるチャンスを与えてくれ、そして今回は奪い去ってしまった……」と会見で涙をこぼした。

 今大会の総括を求められたジモニッチは、「これがヤンコの最後の試合で……」と言ったきり、涙で言葉が続かない。
「ヤンコが引退することにより、セルビアの黄金時代は終わりを迎える。だが彼は今後もずっと、我々のそばにいてくれるはずだ」
 キャプテンが絞り出したその言葉に、チームメイト全員が目を赤くする。

 新たなフォーマットで迎えた初のデビスカップは、かくして一つの時代に幕を引いた。

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