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【伊達公子】自分にとっての一番良い方法は常に変わる。別の方法を試さなくては成長しない<SMASH>

伊達公子

2022.12.09

ディフェンドのプレッシャーがある選手は「中波をたくさん作ることに集中」すると良いと言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 テニス選手のオフシーズンの取り組み方は人によって異なりますが、その年の状況によっても違うものであるべきです。

 わかりやすい目安となるのはランキングの変動です。前回の見直し作業でも書きましたが、ランキングが落ちた選手は何かが足りなかったわけですから、変化が必要になってきます。何が良くて何が悪かったのか。良いものは維持でいいですが、悪い部分は変えていきましょう。

 オフシーズンの内容に限ったことではなく、大会のスケジューリング、練習時間や内容、トレーニングの取り組み方など。人によりますが栄養や睡眠も工夫する要素としてはありますね。

 日本人選手には出場する大会を変えなかったり、同じ内容を繰り返す人が多く見受けられる傾向にあります。成長するために悪い要因を探して別の方法にトライするということを世界中のプロが行なっています。自分にとっての一番良い方法は、常に変わっていくものなので、色々な方法を試していくべきです。ランキングが落ちた選手だけでなく、常に同じ位置で変化が見られない選手にも同じことが言えます。

 逆にランキングが上がった選手はどうでしょうか。良い取り組みが多かったと思うので、良い部分は基本継続でいいと思います。気になるのは、ディフェンドのプレッシャーでしょう。
 
 獲得したポイントは1年後には消えます。そのポイントを守ろうとするとうまくいかない場合が多いです。同じ時期にピークがくるとは限りませんし、ドロー運もあります。守るという意識ではなく、「安定して自分のレベルを上げていけば、必然的にディフェンドできるもの」と言い聞かせるしかありません。そういう意味では前年に良い結果を生み出していても、いつも進化、変化させることに貪欲に取り組まなければ成長は難しくなります。

 つまり、1つの大きな波ではなく、波がたくさんあればいいわけです。1年に1度100ポイントを獲得するのではなく、30や40ポイントが数回あるようにしていけば、プレッシャーも半減できるはずです。年間を通してコンスタントに中ぐらいの波を作れるレベルアップにフォーカスしていくといいでしょう。

 今、この話を聞いて、腑に落ちるものがあるなら良い精神状態で次のシーズンを迎えられると思います。まだプレッシャーを扱いきれていないと感じるならば、スポーツサイコロジストに相談したり、自分が信頼してオープンに気持ちを打ち明けられる相手と話しておくといいですよ。

 たとえ同じ内容でも言われる相手によって、ストンと納得できる場合があります。そういう相手を見つけておくと、シーズン中にプレッシャーを感じた時にも、話すことでパフォーマンスを出しやすくなります。ランキングが上がった人こそ、心の準備をしておくことです。普通のことが普通にできるように。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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