海外テニス

ジョコビッチの大会出場を阻む米国のプロトコルにフリッツが異議「そろそろ彼を入国させるべき」<SMASH>

中村光佑

2023.01.08

外国人渡航者へのワクチン接種義務が延長されたため、ジョコビッチ(右)の米国大会出場は認められない見通し。フリッツ(左)は厳しい規制に疑問を呈している。(C)Getty Images

 男子テニス元世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/現世界ランク5位)が、今年3月8日から開催される「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ハードコート/ATP1000)と同月22日に開幕する「マイアミ・オープン」(アメリカ・マイアミ/ハードコート/ATP1000)のマスターズ2大会で、2年連続の欠場を余儀なくされる可能性が高まっている。

 周知の通りグルテンアレルギーを持つ35歳のジョコビッチは「身体を気遣いたい」として新型コロナウイルスのワクチンを接種していない。そのため彼は非米国移民に対してワクチン接種義務を課しているアメリカに入国することができず、昨年3月のインディアンウェルズとマイアミは強制的に欠場となった。

 現在も新型コロナは完全に収束しているわけではないものの、ここ最近は数多くのツアー公式戦や大会開催国で感染拡大プロトコルの緩和や接種要件の撤廃に踏み切る動きが目立っている。

 だが、このほど米運輸保安庁が公表した声明文では、同国における外国人渡航者へのワクチン接種義務付けが「今年の4月10日まで延長される」と記載されているのだ。すなわち3月になっても変更が加えられなかった場合、ジョコビッチは再びアメリカに足を踏み入れることができなくなるというわけだ。

 しかし、スペインのテニス専門メディア『Punto de Break』によると、当のジョコビッチは「まだ正式に決まったものではないと思う」と語る一方、「もし正式なものなら、そういうことなのだろう。アメリカに行けないなら、(もちろん)行くことはできない」と、どのような結果になろうとも米国側の決定を潔く受け入れる意志を示した。
 
 そんななか、昨年のインディアンウェルズでマスターズ初優勝を成し遂げた男子世界9位のテイラー・フリッツ(アメリカ)は、ジョコビッチが米入国を認められない見込みとなったことを受け、母国の過剰な新型コロナ感染拡大防止プロトコルに疑問を呈している。

 現在豪州で開催されている男女混合の国別対抗戦「ユナイテッドカップ」(12月29日~1月8日/ハードコート)で、エースとして米国を決勝に導いた25歳は、準決勝後の会見で以下のようなコメントを残した。

「タイトル防衛を目標とする選手の立場からすると、明らかにノバク(ジョコビッチ)がいなければドローは楽になると思うが、でもどうなのだろう。もうそろそろ、彼を入国させるべき時期に来ていると思うが、僕が国のルールを作ることはできないからね」

 ワクチン未接種はジョコビッチ自身の判断とは言え、1人のプロテニスプレーヤーとして大会に参加できないという現実は心底つらいものだろう。インディアンウェルズとマイアミの開幕まで約2か月あまり、なんとか状況が好転することを願うしかない。

文●中村光佑

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