専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

【レジェンドの素顔13】ステファン・エドバーグがバックハンドを両手から片手に変えた理由とは?│後編<SMASH>

立原修造

2023.05.07

バックハンドを片手打ちに変える決断は簡単ではなかった。写真:スマッシュ写真部

バックハンドを片手打ちに変える決断は簡単ではなかった。写真:スマッシュ写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、ステファン・エドバーグを取り上げよう。

◆  ◆  ◆

今のバックハンドのままでは将来に不安が残る

 14歳の時、エドバーグはバックハンドで大いに悩むようになった。身体が成長するにつれて、両手打ちがどうもしっくりいかないようになっていたのである。

 さらに、気になっている点があった。両手打ちだと、ネットプレーとのコンビネーションがスムーズにいかないのだ。また、アプローチショットには最適と言われる深いスライスボールも、両手打ちでは難しかった。

――やはり、両手打ちはベースラインプレーヤーにこそ有効なんだよ。

 彼はそう思うようになった。事実、当時の世界的プレーヤーを見れば一目瞭然だった。ボルグ、クリス・エバート、トレーシー・オースチンなど、両手打ちを武器にする人はほとんどベースラインプレーヤーなのだ。

――自分が目指す攻撃テニスに、両手打ちはふさわしくない。

 そんなふうに考えるようになった。ただ、テニスを始めた時から慣れ親しんできたものをおいそれとは変えられなかった。何よりも両手打ちは、彼の身体にしみつきすぎていたのである。

 エドバーグは悩んだ。ことは自分のテニス生命に関わる問題だった。もし彼が、小さい頃から特定のコーチについていたら、両手打ちのまま押し通していたかもしれない。コーチはどうしても失敗を恐れる。両手打ちである程度打てていれば、それをさらに突き進めた方が無難だと考えがちである。
 
 しかし、エドバーグはもっと先を見ていた。この頃すでに、プロのプレーヤーになる決意を固め始めていた。そして、将来、ネットプレーに活路を見出そうとする時、両手打ちがハンディになるのではないかと考えた。

――変えるのなら今しかない。

 エドバーグはそう決断した。しかし、失敗した時のことが頭を何度もかすめて、実際にはなかなか踏み切れないでいた。

 そこでエドバーグは、ボルグのコーチとして有名だったパーシー・ロズベルグの指導を受けることを思い立った。自分でロズベルグに連絡をとり、ストックホルムまで出かけて行った。

 エドバーグのバックハンドを見たロズベルグは、即座に片手打ちを勧めた。

「ボルグのフットワークは素晴らしかった。だから、彼は両手打ちを完璧にマスターすることができた。しかし、キミは片手打ちの方が持ち味が生きるはずだ。今からでも遅くないから片手打ちにしたらどうだろう」

 ロズベルグの助言を得て、エドバーグのハラは決まった。もう迷いはなかった。何とも奇妙な巡り合わせだった。ボルグの両手打ちを完成させたロズベルグが、今度はエドバーグを両手打ちから片手打ちに転向させることになったのである。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号