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海外テニス

【レジェンドの素顔13】ステファン・エドバーグがバックハンドを両手から片手に変えた理由とは?│前編<SMASH>

立原修造

2023.05.05

エドバーグは14歳の時にバックハンドを両手から片手打ちに変えたことがテニス人生最大の転機だと言われている。写真:スマッシュ写真部

エドバーグは14歳の時にバックハンドを両手から片手打ちに変えたことがテニス人生最大の転機だと言われている。写真:スマッシュ写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、ステファン・エドバーグを取り上げよう。

 エドバーグのプレーを特徴づけているものに、バックハンド・ストロークがある。フォアハンドに比べると安定性もあり、ダイナミックなフォームから繰り出すショットは威力十分だ。14歳まで両手打ちのエドバーグだったが、ある日、片手打ちに変えた。そこにはどんな意図があったのだろうか。

◆  ◆  ◆

 人は誰でも、いくつかの転機を経る。その時に何気なく選んだ道が、あとになって人生を左右するほど重要性を帯びてくることもある。エドバーグは21歳の時点で、すでに何度か転機が訪れていた。テニスとの出会い、ジュニアグランドスラムの達成、全豪オープン初優勝と2連覇――。

 ただし、テニスプレーヤーとしての最大の転機は14歳の時だった。この歳、バックハンドを両手打ちから片手打ちに変えたのだ。ささいなことと人は言うかもしれない。しかし、ささいなことでなかったことは、エドバーグ自身が一番よく知っている。

相手のミスを待つテニスなんてクンくらえ!

 エドバーグが14歳まで両手打ちをしていたと聞くと、スウェーデンの国民的英雄であったボルグにあやかって両手で打っていたのではないか、と連想するに違いない。
 
 しかし、こう思われることをエドバーグは快く思っていなかった。偉大な先達とはいえ、他人の真似をすることを彼は嫌うのである。「他の人はわからないけど、僕の両手打ちはボルグから影響を受けたわけではないんだ。だって、僕はボルグが有名になる以前から両手打ちをしていたんだもの――」

 エドバーグが両手打ちを始めたのは、単に非力だったことが理由だ。小さい頃は力がなかったので、自然にバックハンドを両手で打つようになった。すると、それまでネットを越えなかったボールも面白いように越えるようになった。

 そもそも、「スウェーデンの一流プレーヤーは地方出身者がほとんどだ」という事実があった。田舎育ちが一流プレーヤーになる条件にすらなっていたのだ。実際、ボルグ、ビランデル、エドバーグは小さな町で育った。

 スウェーデンの有名なコーチであるレナート・ベルゲリンはこう分析していた。

「小さな町になるほど、子どもは自由にコートを使うことはできるし、うるさい大人たちにああしろ、こうしろと言われなくて済む。このように伸び伸びとプレーできる環境が大事なんだ。また、小さな町になるほど娯楽が少なく、好きなだけテニスに打ち込めるのもプラスだね」
 
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