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【伊達公子】ドーピングにならないためにアスリートは警戒して生活。市販薬はリスクを伴う<SMASH>

伊達公子

2023.02.10

「ドーピングの動きはなくならない気がします」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

「ドーピングの動きはなくならない気がします」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 昨年終盤に、元女子テニス世界1位のシモナ・ハレップがドーピングで出場停止になりました。彼女は禁止薬物を摂取していないと主張しています。テニス選手に限らずアスリートにとって、ドーピングのリスクは身近な問題で、生活にも影響を及ぼすものなのです。

 禁止薬物リストは年に1度新しくなります。つまり流動的で、例えば私のファーストキャリアの時は、市販薬の痛み止めでは「商品A」はOKで、「商品B」はNGでしたが、セカンドキャリアの時は逆になっていました。こんな感じで、年々リストは変わっていくのです。

 加えて、このリストがかなり込み入っており、隅から隅までは私も読んではいませんでした。つまり、市販薬を飲むことはドーピングにひっかかるリスクを伴うわけです。病院でドクターに「ドーピングにひっかからないか調べてください」とお願いして処方してもらっても、そのドクターが果たしてどこまで真剣に調べてくれたのかはわかりません。

 もしも、ざっくり確認しただけで結果的に禁止薬物が入っていた場合、ドーピングにひっかかるのはアスリートであり、出場停止期間やイメージは、もう取り返しがつきません。だから、本当に信頼のおけるドクターが処方してくれた薬しか飲めませんし、それでも不安なら禁止薬物表を全部自分で理解するしかありません。それほどアスリートは警戒して生活しています。
 
 しかし、実際には意図的に摂っているアスリートやチームがあるのが現実でしょう。4年に1度のオリンピックでメダルが取れるかどうかで人生は変わりますし、選手だけでなくそのチームに恩恵があるわけですから、このドーピングの動きはなくならない気がします。

 パフォーマンスが上がるから、飲ませたい、飲みたいという人がいるのが現実で、そこまでして勝ちたい人、そこまでして勝とうと思わない人に分かれると思います。

 ドーピングは、ドクターがまだ禁止薬物になっていない、でもパフォーマンスが上がるものを見つけてアスリートに飲ませる。それが来年には禁止リストに入る。また新しい物を見つける。このいたちごっこです。

 そこまで意図的に行なっていなくても、アスリートは食事だけで全ての栄養を補えないことが多いので、サプリメントを活用することはよくあります。それが、もっと早く身体に吸収されてパフォーマンスが上がるものはないかなと、エスカレートしていくことも考えられます。

 アンチ・ドーピングの活動は必要というわけです。しかし、ドーピングをしようとしていない選手にとっては、やらなければいけないこと、気を付けるべきことが増えていることは間違いありません。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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