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海外テニス

【レジェンドの素顔16】女王ナブラチロワを自滅に追い込んだ“恐るべき17歳”グラフ│後編<SMASH>

立原修造

2024.05.05

グラフは実戦になると、強さが際立ってくるタイプだった。写真:スマッシュ写真部

グラフは実戦になると、強さが際立ってくるタイプだった。写真:スマッシュ写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、ステフィ・グラフを取り上げよう。

 1987年の全仏オープン、グラフ対ナブラチロワの決勝は最後まで予断を許さぬ壮絶な一戦となった。第1セットはグラフが6-4で取り、第2セットはナブラチロワが6-4と取り返し、第3セットを3-5とリードされていたグラフが5オールとイーブンに持ち込んだ。動じる素振りすら見せない17歳のグラフと動揺を隠せない女子テニス界に君臨するナブラチロワ。この先どんな展開が待ち受けているのだろうか。

◆  ◆  ◆

 見た目以上に強さを感じさせるプレーヤーがいる。いざ実戦になると、強さが際立ってくるといったタイプ――。グラフはそんなプレーヤーだ。その背景には強初な精神力がある。持って生まれた意志の強さが、土壇場になればなるほどプラスアルファを生み出す。

 一方、ナブラチロワは見た目通りの強さを誇るプレーヤーである。切れの良いサービスやボレーが強さの証明であって、プラスアルファなど必要としない。自分の実力さえ発揮できれば勝てるのである。
 
 その両者は第1セットのはじめから激しい闘いを繰り広げてきた。ショットの切れ味ではナブラチロワの方が上回っており、本来ならナブラチロワが楽にストレートで勝てた試合だったかもしれない。しかし、注意深く試合の内容を追っていくと、そこにはグラフのしたたかさが浮き彫りにされてくる。

 この試合で、長い打ち合いにもつれこんだポイントは、ことごとくグラフが取っていた。これが、ナブラチロワの疲れを倍加させる原因となった。

 同じ1ポイントでも、あっさり取られたポイントと、粘りに粘った末落としたポイントとでは、受けるショックが全然違う。要所要所の打ち合いに敗れたナブラチロワは、見た目以上に精神的にも肉体的にも疲れていたのである。まるでジワリジワリとボディーブローを受けていたようなものだ。

 第3セット5-3とリードしながら余裕がなかったのも、そのせいだった。そして、5オールとなった今、ナブラチロワの焦りはさらに大きくなった。その後、お互いにサービスゲームをキープし合って6-6となった。第3セットはタイブレークがない。どちらかが2セットアップするまで行なわれる。
 
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