海外テニス

ロシア・ベラルーシ選手除外で「英テニス協会がツアー大会をはく奪される恐れ」と英メディアが報道<SMASH>

中村光佑

2023.02.21

ATPも昨年末にLTAに100万ドルの罰金を科すことを決定した。(写真はウインブルドン)。(C)Getty Images

 昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻はテニス界にも大きな影響を与え続けている。同年7月に行なわれたテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/芝)では、ロシアと同国の軍事攻撃を支援するベラルーシ国籍の選手の締め出しを決行。また昨夏には、英国内で芝コートのツアー大会を運営するイギリス・ローンテニス協会(以下LTA)も計5つのトーナメント(うち3つは下部大会)で両国のプレーヤーの出場を禁止した。

 ちなみにこのLTAの強硬措置はロシアとベラルーシが、ウインブルドンやその他英国開催のツアー公式戦をウクライナ侵攻のプロパガンダ(宣伝活動)に利用することを懸念したイギリス政府からの助言に従ったものだった。多数のウクライナ国民が卑劣な軍事的蛮行によって犠牲になったことを踏まえれば、至極全うな決定であったと言えるだろう。

 ところがこれがテニス界で定める「全ての国の選手を平等に大会へ参加させる」という基本原則に反しているとの理由から、昨年7月にWTA(女子プロテニス協会)はLTAに対して25万ドル(約3400万円)の罰金を科した。これに追随する形でATP(男子プロテニス協会)も22年末に「LTAに100万ドル(約1億3700万円)の罰金を科すことを決定した」と発表。

 LTAはすぐさま「深く失望している。我々は英国政府の勧告に従ったまでだ。ATPはロシアのウクライナ侵攻によって生み出された例外的な状況、または国際スポーツコミュニティとその侵略に対する英国政府の対応を認識できていない」と抗議文をリリースしたものの、両団体による不条理な決定が覆ることはなかった。
 
 さらにここに来て新たな懸念が浮上している。このほど英紙『Daily Mail』は、「ロシア・ベラルーシ人選手に対する出場禁止令を撤回できなければ、LTAは今年度のATP及びWTAのツアー大会を開催する権利をはく奪される恐れがある」と報じたのだ。

 すなわち仮にLTAが2国の選手の締め出しを継続する場合、今年は長きにわたって大会スケジュールに定着してきた男子テニスのクイーンズ・クラブ(ATP500/芝)やイーストボーン(ATP250/芝)といった伝統的なトーナメントが開かれない可能性も否定はできないというわけだ。

 だがテニス系海外メディア『UBITENNIS』によれば、一連の報道についてLTAはまだコメントを出していないものの、同協会やウインブルドンを主催するAETLC(オールイングランド・ローンテニス&クローケークラブ)はATPやWTAからのさらなる制裁を回避するため、「出場禁止措置を解除する方向に舵を切るかもしれない」と伝えている。ただ現時点では情報が錯綜しており、最終的にどのような措置が講じられるかについては正式発表を待つしかないだろう。

 未だ収束の見えないウクライナ侵攻。果たしてLTAやAETLCはリスクを負ってでも出場禁止令を継続させるのか、それとも撤回に踏み切るのか、今後の動向から目が離せない。

文●中村光佑

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