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海外テニス

【レジェンドの素顔17】テニス界で唯一『年間ゴールデンスラム』を達成したグラフは向上心の塊だった│後編<SMASH>

立原修造

2024.12.30

グラフは常に向上心を持ち先を見据えていた。(C)Getty Images

グラフは常に向上心を持ち先を見据えていた。(C)Getty Images

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「レジェンドの素顔」。前回に引き続き、ステフィ・グラフを取り上げよう。

 グラフとナブラチロワの対決となった1987年全米オープン決勝。ここでグラフは痛恨の敗戦を喫した。その日からグラフの新たなチャレンジが始まった。食生活の乱れから体重増という思わぬ難敵を抱えながらサーブ&ボレーのレベルアップに全力で取り組むグラフ。名実ともにナンバーワンと呼ばれる日のために18歳の少女の精進は続く。

◆  ◆  ◆

グラフの華麗なる変貌に興味は尽きない

「10年間、トップの座をキープしなければ、歴史に残る大選手になれない。私はお前がエバートやナブラチロワの上を行く選手になってくれることを願っているんだ」

 父親のペーターの夢はふくらむ一方である。グラフも、自分がテニス史においてエバートやナブラチロワと肩を並べられることができればどんなに素晴らしいことか、と思う。
 
<そのためには、これからやらなければならないことが山ほどある。もっと頑張らなくては――>

 グラフの向上心はとどまることを知らない。

 グラフは自分のテニスを冷静に振り返ってみて、第1の目標はクリアしたのではないか、と考えている。第1の目標――。それはクレーコートでのテニスを完璧にマスターすることであった。

 クレーコートでストロークをじっくり鍛え、そのストローク力を軸にプレーを組み立てる――。その進め方は、結果的にグラフのアイデンティティを確立させた。

 グラフは1987年4月のファミリーサークル・マガジンカップから全仏オープンまでクレーの大会で連続優勝した。もはやクレーコートでは敵がいないも同然である。初のグランドスラム・タイトルも全仏オープンで取った。クレーコートにはいつも自信を持って臨める。

 次は第2の目標へのチャレンジだ。第2の目標――。それは、ボレーとサービスをより高度に磨くことである。ウインブルドンと全米オープンを制覇するには、これは不可欠なことだ。

 幸いにも、グラフはやわらかい手首を持っている。ストローク力に優るプレーヤーはその反動として、どうしても手首が硬くなるものだが、グラフにはそれがない。スルスルッとネットに出てきて、実に柔らかいボレーをする。

 ただし、ネットプレーヤーに必要なもう1つの条件には欠けている。ボールに応じて左右に瞬間的に動く反射神経である。この動作にまだ不安を抱くだけに、ネットに出る回数も少なくなりがちだ。
 
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