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【伊達公子】海外遠征で必ず食中毒になると言われる国で、1週間健康で過ごす方法<SMASH>

伊達公子

2023.03.10

キャリアで1度だけ食中毒になったと言う伊達公子さん。原因は大会オフィシャルドリンクだった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 テニス選手の海外遠征は出発してから約2、3カ月続きます。私のファーストキャリアの時、苦労したのは食事です。プレーヤーズラウンジに出る食事の種類は限られていたし、美味しい日本食レストランはほとんどありませんでした。私は試合前におにぎりを食べたかったこともあり、炊飯器を遠征に持参していたほどです。

 今はクオリティーの高い日本食レストランがたくさんありますし、プレーヤーズラウンジで提供される食事も豊富になってきており、それほど苦労することはありません。ただしそれは、WTAツアーレベルの話でしょう。

 ITFレベルの大会に出る場合、食事の満足度ではなく、食中毒を回避することが最優先という場合があります。私はキャリアを通して1度だけ食中毒になりました。大会のオフィシャルドリンクを飲んでいたのですが、それが水道水をペットボトルに詰めて正式に販売しているものだったんです。

 何か体調がおかしいと思いながら試合をしていると、吐き気がしてきました。運悪く胸の下にゴムがあるウェアだったので、必死でゴムの紐をちぎってどうにかしようとしましたが、結局リタイアしました。最悪だったのが、ホテルに帰るタクシーで具合が悪化したことです。

 脂汗を流しながら吐くのを必死で耐えて、どうにかホテルに到着しました。その後はずっと部屋で、5分置きぐらいにトイレに行くことに。大会ディレクターから「病院に行く?」とメールが来ましたが、私にとってはトイレがある場所から離れる方が不安でした。結局その格闘は夜中まで続きました……。食中毒になると、試合どころではなく、長い苦痛との戦いなのです。
 
 テニス界では、インドの大会に行くと必ず食中毒になると言われますが、私は万全の対策で乗り越えた経験があります。インドの前週は台湾だったので、日本のデパートで1週間分のレトルト食品を購入して持参。野菜は食べない、水は飲まない、火が通った物だけを食べることを徹底しました。

 キレイで新しいホテルだったことも幸いでした。ホテルのカレーが美味しくて、豆と米を発酵させた生地を薄く焼いた"ドーサ"で食べていました。これを朝と夜、毎日食べることで1週間しのげたんです。ドーサにはまり、持参したレトルト食品には手をつけませんでした(笑)。

 他にも、口から水が入らないように息を止めてシャワーを浴びましたね。意外にシャワーを浴びる時に、口を開けていることが多いそうです。だから、息を止めて浴びて、息を吸って、また浴びてを繰り返しました(笑)。

 大会会場のシャワールームは裸足で歩けないぐらいの惨状だったので決して使わず、練習や試合後には1度ホテルに戻ってシャワーを浴びていましたし、歯磨きはミネラルウォーターを使いました。

 この1週間は食中毒にならないために細心の注意を払いながらの生活だったので、もう2度とやりたいとは思いません(笑)。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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