海外テニス

【プロの観戦眼26】飛びつきざまにフォアでしばくティアフォーの超高速リターンを見よ!~森井大治<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2023.03.05

時間のない中で、リストを瞬間的に利かして遠いボールを引っぱたく(4~7コマ目)。ティアフォーが時折試みる超高速リターンは必見だ。右下は森井大治氏。写真:THE DIGEST写真部

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがスゴイ!」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第26回は元ナショナルメンバーで、現在は日本体育大学硬式テニス部監督を務める森井大治氏に話を聞いた。森井氏が推すのは、2022年シーズン後半に大躍進を見せたフランシス・ティアフォーだ。

「見てほしいのはティアフォーのフォアハンドリターンです。遠いボールをフラットでしばいた時、目にも止まらぬ超高速が出ます」

 デュースサイドでワイドに切れていくサービスが来た時、ティアフォーは飛びつきざまにフォアハンドで引っぱたき、相手コートに突き刺す。その球速が半端ではない。

「去年のレーバー・カップのダブルスでは、ネットにいるフェデラーやナダルに対してヤバイくらいにぶつけていました。狙っていると言うより"行っちゃってる"感じですけどね」と森井氏。そんなショットだからもちろん全部入るわけではないが、そのスピードは一見の価値アリだと言う。

 技術的にそれを可能にしている鍵は、類まれなリストワークにあるそうだ。ティアフォーは、普段のストロークではラケット面を伏せてヒジからテイクバックするが、サービスリターンではそんな余裕はない。
 
「いつもやっているテイクバックができないから、手先だけで面をフラットにぶつけていく。やっと触るようなボールでも、リストを瞬間的に返してドンピシャに当てられるんです」

 これは一般プレーヤーが学べるような易しいテクニックではない。単純に「プロの技としてスゴさを感じてほしい」と森井氏は言う。

「いつもこれを打つわけではなく、1試合に何球かでしょう。見られたらラッキーです」

 今度ティアフォーのテニスを見る時には、皆さんが幸運に恵まれますように……。

◆Frances Tiafoe/フランシス・ティアフォー(アメリカ)
1998年1月20日、米国・ハイアッツビル生まれ。188cm、86kg、右利き、両手BH。双子の兄弟と共に3歳から壁打ちテニスを始める。幼少期は父が建設に携わったジュニアテニスセンターで練習。15歳でオレンジボウル18歳以下を制す。18年デルレイビーチでツアー初優勝、19年全豪ベスト8、22年全米では4強入り。ATP自己最高14位(23年2/6付)。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【PHOTO】ティアフォーのフォアハンド"しばき"リターン「30コマの超連続写真」