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海外テニス

好調のダニエル太郎が2大会連続で予選突破!目指すは「強い選手」ではなく「強い人間」<SMASH>

内田暁

2023.03.10

2大会連続で予選突破を果たすなど好調を維持するダニエル太郎には、哲学的ともいえる独自の考え方があった。(C)Getty Images

2大会連続で予選突破を果たすなど好調を維持するダニエル太郎には、哲学的ともいえる独自の考え方があった。(C)Getty Images

「強い人間になることです」

 それはなんとも、ダニエル太郎らしい表現だった。

 現在、カリフォルニア州で開催中の「BNPパリバ・オープン」(米国・インディアンウェルズ/ハードコート/ATP1000)。その予選決勝を制した後の会見時に、彼が口にした言葉である。

 今年2月にダニエルは、約2年間師事したコーチ/スポーツ心理学者のジャッキー・リールドンとの契約を満了した。

 現在は日本ナショナルチームの支援を得ながらも、特定のコーチや指導者はいない。

「自分で自分の決断に責任を取る時期に来ているのかな…」

 今年1月の全豪オープン時にも、彼はそんな思いをこぼしていた。

「決断」という概念の定義にも、彼には独自の解釈がある。

「人生そのものがゲームみたいなもので、何が正しい決断かをマスターできることは、一生ないと思う。それをどんどん極めていくことはできるけど、100%に到達するのはフェデラーやジョコビッチもできないことだと思うので。それが死ぬまでのプロセスだと思います」

 ここにもダニエル特有の、テニスと人生観は不可分と捉える思想が透けて見えるようだ。
 
 今年30歳を迎えたダニエルは、映画や音楽にも造詣が深く、テニスの話をしているはずがいつのまにか、哲学的な問答に発展することが多い。

 そんな彼の性向や資質は、アメリカに生まれ、日本に育ち、スペインでテニスの基礎を築いた国際色豊かな足跡に由来するものだろうか? それとも、家族や友人の影響が大きいのか?

 その問いにダニエルは、「あぁ」と小さくうなり、すぐに続けた。

「僕のアメリカの方(父方)のお爺ちゃんが生理学の教授、お祖母ちゃんは解剖学の教授だったんです。だから2人には、妹と一緒にいろんなことを質問して、よく話したり教わりました。宇宙の先には何があるのかとか、死んだらどうなるのか……とか」

「両親の影響もあります。妹はビジネス的というか、結構プラクティカル(実用的)に考える方で、父さんに似ている。僕はお母さんに似ていて、もっと空気のような会話をよくするんです。お母さんと同じで僕も映画が大好きで、その映画もインディー系だったり、学びがあるような内容だったり」

 夏休みに父親の実家に滞在し、博学な祖父母を妹とともに質問攻めした幼少期が、ダニエルの人間的基礎を形成したのだろう。
 
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