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【テニスストリング基礎知識】試合中に“ストリングの並びを指で整える”必要はあるのか<SMASH>

スマッシュ編集部

2023.06.03

プロの試合を見ているとポイント間にストリングを指で整えている姿を見るが、一般プレーヤーも真似したほうがいいのだろうか…。(C)Getty Images

 テニスボールはラケットを使って打ちます。けれどもボールと直接触れるのは、ラケットに張られている「ストリング(糸)」です。そのためストリングの知識を深めることは、テニスのパフォーマンスを引き上げる大切なことなのです。

 知っているようで、あまり知られていないストリングのこと。そこでストリングやラケットに関する素朴な疑問をプロのストリンガー(ストリングを張る人)に答えてもらいました。

 今回のテーマは「試合中にストリングを整えること」についてです。プロの試合ではポイント間にストリングの並びを整えているシーンを見かけます(写真)。こうした行為は一般プレーヤーも真似するべきでしょうか。ストリンガーに訊いてみました。

    ◆    ◆    ◆

 試合中にストリングを整えるのはプロやアマチュアに関係なくやった方がいいです。なぜなら、ストリングを整えないとデメリットの方が大きいからです 。 

 ストリングが大きくずれている場合、ラケット面の同じ場所に当たっていても回転量 や反発力に影響が出てきます。ストリングを正しい位置に戻すことにより、本来の性能が出やすく安定してボールをコントロールすることができます。

 基本的に新しく張り替えたストリングは、プレーヤーの技術にしっかり合っていると、ある程度自分で元の位置に戻る力が働きます。だからずれたストリングを戻す作業自体はそれほど難しくはないでしょう。
 
 テニスの技術が上がっていくと、ボールが当たる場所のズレが少なくなっていきます。しかし、当たる場所が広範囲にわたると全体的にストリングがずれてしまい、そうなると戻すのが結構面倒になります。日々プレーをしていくなかで、ストリングを戻す範囲が狭くなってきたら、「自分は上達しているんだな」と実感できるでしょう。

 また、ストリングを元の位置に戻しにくくなっているのは、ストリング自体の性能が落ちている、全体のバランスが崩れている、などの不具合が出ている可能性があるので張替の目安にもなります。

 なお、優れた技術を持っているプロ選手が試合中にストリングを整える1番の理由は、集中力を上げたり・維持するためです。メンタルが大きく影響するテニスの試合では、自分の集中力が切れている時に気持ちをリセットする手段として使われていることが多いでようです。選手の中にはラケット自体を変える場合もあります。

  テニスのレベルが上がれば上がるほどギアの性能の影響は大きくなっていきます。これからどんどん上達していきたいのであればストリングの状態を確認する時間を作って客観的にプレーを見る事も重要です。

解説:鈴木貴也(テニスサポートセンター/2021年東京五輪ストリンギングチームメンバー)
取材協力●テニスサポートセンター

構成●スマッシュ編集部
※2023年4月号より抜粋・再編集

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