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ズベレフに敗れるも初の四大大会8強で存在感を示したエチェベリ。「この2週間は僕の人生を変えた」と全仏を総括<SMASH>

中村光佑

2023.06.08

過去に四大大会で1勝しか挙げていなかったエチャベリは、8強入りした全仏を「全てがポジティブな出来事だった」と振り返った。(C)Getty Images

 テニス四大大会「全仏オープン」は現地6月7日に男子シングルス準々決勝を実施。怒涛の快進撃を続けてきたトマス・マルティン・エチェベリ(アルゼンチン/世界ランク49位)は、ツアー通算19勝を誇る元世界2位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/現27位)に挑むも4-6、6-3、3-6、4-6で敗れ、キャリア初の四大大会ベスト4進出を逃した。

 南米出身でクレーコートを最も得意とするエチェベリは、196センチの長身を生かした強烈なサービスとストローク、粘り強いディフェンスで今大会初戦から素晴らしい勝ち上がりを見せてきた。4回戦では第27シードの西岡良仁(33位)を7-6(8)、6-0、6-1のストレートで退け、四大大会で初のベスト8へと駒を進めていた。

 初戦から1セットも落とさずに勝ち進んできたエチェベリが準々決勝で対峙したのは、昨年の全仏準決勝で負った右足首のケガからの完全復活を目指す26歳のズベレフ。両者は今大会が初の顔合わせだ。

 試合は立ち上がりから激しい攻防が繰り広げられる中、エチェベリはズベレフの角度の付いたショットでオープンコートを作られる場面が目立ち、思うようにポイントを奪えない。第6ゲームから3ゲーム連取を許し、そのまま第1セットを落としてしまう。

 それでも第2セットに入るとエチェベリがフォアのストレートを軸にズベレフを攻め立てる場面が増え、第6ゲームでこの日初のブレークに成功。直後にブレークバックを許すも、続く第8ゲームで再びズベレフのサービスを破り、そのリードを守り切って1セットオールとする。
 
 第3セットも第1ゲームでいきなりブレークを果たしたエチェベリだったが、再びリズムを取り戻したズベレフとのラリー戦で次第にミスを重ね、第3ゲームから立て続けに5ゲームを献上してセットカウント1-2に。シーソーゲームとなった第4セットでも第7ゲームで痛恨のブレークを喫し、3時間22分の接戦の末に準々決勝敗退となった。

 昨年4月に初めてトップ100入りを果たし、今季もすでに2度ツアー決勝に進出するなど着実に進化しているエチェベリ。だが一方で最高峰の四大大会では過去5度本戦に出場するも勝利したのは1回だけだった。おそらく今回の全仏の大躍進で初めて彼の存在を知ったファンも多いことだろう。

 ローランギャロスに旋風を巻き起こした23歳は準々決勝後の会見で、まず勝者のズベレフを素直に称賛。続けて「負けるというのはタフなものだね」と敗戦の弁を口にしつつ、終始良いパフォーマンスを披露できた今大会を前向きに総括した。

「彼は世界のトップ10に入る選手で、この大会では過去にも2年連続で準決勝まで勝ち進んでいた。彼は今日、信じられないようなテニスをしたが、僕にも第3、4セットでチャンスがあった。この2週間は僕の人生を変えた。今日フィリップシャトリエ(センターコート)でプレーできたことは、僕にとって素晴らしい経験だった。全てがポジティブな出来事だった。今日の試合で何が起こったかはチームと話すつもりだ」

 力強いテニスを武器に持つだけに、クレーだけでなく芝やハードコートでの活躍も大いに期待できるだろう。全仏閉幕直後に始まる芝シーズンでもエチェベリのプレーに注目しよう。

文●中村光佑

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【動画】エチャベリがズベレフに食い下がった全仏オープン準々決勝ハイライト