テニス四大大会「全仏オープン」に出場中のアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ/世界ランク27位)が4回戦後の会見で、自身が抱える1型糖尿病の発作を防ぐためのインスリン注射をめぐって、大会関係者と衝突したことを明かした。
ズベレフは3歳の頃から生活習慣や体型とは関係なく発症する1型糖尿病を患っており、定期的に血糖値をコントロールするためのインスリン注射を行なう必要があることも公表している。事実これまでも度々試合中のチェンジエンドで注射する様子が目撃されている。
ところがグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/29位)と対戦した現地6月5日の4回戦では、いつも通りチェンジエンドで注射をしようとしたところ、大会関係者に制止される一幕があった。
海外メディア『UBITENNIS』によると、実はインスリンは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)のルールブックにおけるホルモンおよび代謝調節物質に関する項目で禁止物質に指定されており、全仏側はこれに則る形でズベレフの注射を止めようとしたようだ。
ちなみに病気の治療目的で禁止物質を身体に取り入れる場合は「TUE」(Therapeutic Use Exemption)と呼ばれる例外措置を申請・取得しなければならないが、ズベレフがドーピング違反を犯したとの報道が出ていないことを踏まえれば、おそらく彼はすでにこのTUEを取得していると考えられる。
会見でズベレフは以前のラウンドから大会関係者が自身の試合中の注射を禁止しようとしていたとコメント。事の詳細を次のように語っている。
「僕はコート上で定期的にインスリン注射をしている。だが全仏ではコート上ですることは許可されておらず、一旦コートを離れる必要があると言われたよ。前の試合(3回戦)では、関係者にインスリン注射がトイレ休憩としてカウントされると言われた。だから僕は『勘弁してくれ! 1試合で2回しかトイレ休憩がないのに、5セットマッチでは4回、5回と注射が必要になることもある』と答えた。僕の健康や生活に必要なことが許されないことになるからそう答えた」
「2回戦でも関係者と議論してから、僕は注射のために外に出た。すると、そのことを知らないスーパーバイザーが部屋に入ってきて、慌てて『そんなことをしてはいけない。医師が注射しなければならない』と言ってきた。僕は『普通の医者だと専門的な知識がなく、注射に関する正しいデータも持っていない場合、僕を助けることはできないから、そのルールは間違っている』と言ったよ」
考え抜いた末にズベレフはディミトロフ戦の最中に関係者へ試合中の注射を許可してほしいと伝えたが、再びそれを却下しようとしてきたと述べ、以下のように不快感をあらわにした。
「今日やっと彼らに伝えたんだ。『もし外で注射する必要があるなら、5秒しかかからないからそうしてもいいが、コート上で注射する方が(早いから)いいんだ』とね。ところが彼らは『コート上での注射は変に見える』と言うんだ。注射しないと僕の命が危ないのに、彼らは『変に見える』と...。だから僕はどこが変なのか、これがドーピング違反に見えるのか? こんな議論をするのは意味がないと伝えた」
無論ルールを遵守しなければならないのは当然のことだが、時には柔軟に対応すべき場面が出てくることもある。今回のズベレフのケースはそれに当てはまるのではないだろうか。
文●中村光佑
【PHOTO】ズベレフはじめ全仏オープン2023で奮闘する男子選手たちの厳選写真!
ズベレフは3歳の頃から生活習慣や体型とは関係なく発症する1型糖尿病を患っており、定期的に血糖値をコントロールするためのインスリン注射を行なう必要があることも公表している。事実これまでも度々試合中のチェンジエンドで注射する様子が目撃されている。
ところがグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/29位)と対戦した現地6月5日の4回戦では、いつも通りチェンジエンドで注射をしようとしたところ、大会関係者に制止される一幕があった。
海外メディア『UBITENNIS』によると、実はインスリンは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)のルールブックにおけるホルモンおよび代謝調節物質に関する項目で禁止物質に指定されており、全仏側はこれに則る形でズベレフの注射を止めようとしたようだ。
ちなみに病気の治療目的で禁止物質を身体に取り入れる場合は「TUE」(Therapeutic Use Exemption)と呼ばれる例外措置を申請・取得しなければならないが、ズベレフがドーピング違反を犯したとの報道が出ていないことを踏まえれば、おそらく彼はすでにこのTUEを取得していると考えられる。
会見でズベレフは以前のラウンドから大会関係者が自身の試合中の注射を禁止しようとしていたとコメント。事の詳細を次のように語っている。
「僕はコート上で定期的にインスリン注射をしている。だが全仏ではコート上ですることは許可されておらず、一旦コートを離れる必要があると言われたよ。前の試合(3回戦)では、関係者にインスリン注射がトイレ休憩としてカウントされると言われた。だから僕は『勘弁してくれ! 1試合で2回しかトイレ休憩がないのに、5セットマッチでは4回、5回と注射が必要になることもある』と答えた。僕の健康や生活に必要なことが許されないことになるからそう答えた」
「2回戦でも関係者と議論してから、僕は注射のために外に出た。すると、そのことを知らないスーパーバイザーが部屋に入ってきて、慌てて『そんなことをしてはいけない。医師が注射しなければならない』と言ってきた。僕は『普通の医者だと専門的な知識がなく、注射に関する正しいデータも持っていない場合、僕を助けることはできないから、そのルールは間違っている』と言ったよ」
考え抜いた末にズベレフはディミトロフ戦の最中に関係者へ試合中の注射を許可してほしいと伝えたが、再びそれを却下しようとしてきたと述べ、以下のように不快感をあらわにした。
「今日やっと彼らに伝えたんだ。『もし外で注射する必要があるなら、5秒しかかからないからそうしてもいいが、コート上で注射する方が(早いから)いいんだ』とね。ところが彼らは『コート上での注射は変に見える』と言うんだ。注射しないと僕の命が危ないのに、彼らは『変に見える』と...。だから僕はどこが変なのか、これがドーピング違反に見えるのか? こんな議論をするのは意味がないと伝えた」
無論ルールを遵守しなければならないのは当然のことだが、時には柔軟に対応すべき場面が出てくることもある。今回のズベレフのケースはそれに当てはまるのではないだろうか。
文●中村光佑
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