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【テニスギア講座】そんなに軽くて大丈夫? あなたが知らない「超軽量ラケット」の世界<SMASH>

松尾高司

2023.06.25

テニスショップに同じデザインのラケットが数多く並ぶのは、同一シリーズの重量バリエーションであることが多く、軽量機でもプロが使う道具の雰囲気を味わえる。写真:松尾高司

 今回は「超軽量ラケット」について取り上げます。その存在価値や、それがフィットするユーザー、プレースタイルについて考えてみましょう。

 テニスショップには同じデザインのラケットがたくさん並びますが、「〇○ライト」とか「○○チーム」など、モデル名が微妙に違っていたりします。これらは基本的に「フレーム重量が違う」ということです。

 プロが使うスペックと、初中級者でも楽に振れるものとで30グラムも違うケースがあり、そうなると同じラケットとは言いがたいので、別の名前で発売しているわけですね。誰しも、プロが使っている道具に対する憧れはあると思いますが、幅広いユーザーにその気持ちを満足してもらいつつ、それぞれにフィットする重さのラケットを用意するというのが「同名・異重量」のファミリーモデルたちなのです。

 振り始めが大変でも、それを克服できるなら、相手の打球に負けず、高速パワフルなボールを打ち出せるのが重いモデル。打球に与えるエネルギーは減少するけど、ラケットを振り出しやすく(操作性が高く)、楽に高速スイングできるのが軽いモデル。

 同名モデルに重さのバリエーションがあるのは「パワーorラクさ」の選択肢です。そしてさらに非力なプレーヤーのために作られたのが「超軽量モデル」なのです。
 
 1985年頃までのラケットは、軽くて360グラム、重いのは400グラム以上ありましたが、フレームのカーボン化によって軽量化が実現し、280グラムくらいの軽量モデルができました。その後のカーボンの進化でさらに軽量化が進み、超軽量ハイパワーモデルが誕生。今では260グラム以下のラケットが多数あります。

 超軽量モデルでは、質量によって打球へ与えるパワーの小ささをカバーするため、フレームを高反発化します。厚ラケ・高反発・超軽量に磨きがかけられたことで他モデルに比べて特殊性が強く、高機能モデル群として別ワク化されます。

 一時期、超軽量モデルの開発競争は沈静化し、その数は減りましたが、今また勢いを盛り返しつつあり、超々軽量モデルに挑むメーカーも現れています。

 例えばプリンス『X115』は、先端部30ミリ厚の高反発設計に、236グラムの軽量ボディで、高反発性と楽々操作性を追求し「シニアのために開発した」と明確に打ち出します。

 プリンス社がシニアに絞って開発したように、超々軽量モデルは誰にでもいいわけではなく、高速スイングしない、ゆったりプレーヤーのために存在しています。今の自分の力でテニスをより楽しくプレーするには、どのウェイトレベルのラケットが強い味方になってくれるか、しっかり検討して選びましょう。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2021年8月号より抜粋・再編集

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