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アルカラスの父親がジョコビッチの練習を盗撮!? ウインブルドンの非公開エリアでの行為発覚で波紋<SMASH>

中村光佑

2023.07.14

アルカラス(左)の父親がウインブルドン決勝で対戦する可能性のあるジョコビッチ(右)の練習を一般人が進入禁止のエリアで撮影したことが問題視されている。(C)Getty Images

 現在開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」の男子シングルスでベスト4に進出した世界ランキング1位のカルロス・アルカラス(スペイン)の父親が、通常は一般公開されていない同大会の練習場「アオランギ・パーク」でノバク・ジョコビッチ(セルビア/2位)が行なったコート練習を撮影したとして物議を醸している。

 これは現地7月12日にセルビアメディア『B92』が伝えたもので、同メディアは「アルカラスの父親がジョコビッチのヒッティングセッションに密着し、その様子を撮影した」と報道。すぐさまスペインメディア『Relevo』が「アルカラス陣営がジョコビッチの練習を撮影したという情報はなく、虚偽報道である」と反論するも、程なくしてアルカラスの父親がジョコビッチの練習動画を入手した旨がほぼ事実であることを、息子のアルカラスがあっさりと認めたのだ。

 海外テニス専門サイト『UBITENNIS』は、同日に実施されたホルガー・ルネ(デンマーク/同6位)との準々決勝に勝利したアルカラスが、試合後の会見で父親の撮影行為に言及したコメントを以下のように掲載している。

「(ウインブルドンの観戦に訪れている)父が練習を撮影したのはおそらく本当だろう。彼は大のテニスファンで、僕の試合だけを見ているわけじゃない。彼は午前11時に会場に入り、試合と選手たちの練習を見てから、夜10時くらいに会場を出ていると思う。ジョコビッチを実際に見ることができるのだから、彼が練習を撮影しているのは事実なのだろう」

 その後ある記者から「あなたの父親はあなたがジョコビッチとの試合で優位に立つために練習動画を撮影したのか?」と問われたアルカラスは、次のように回答した。

「それはないと思う。僕はすでにジョコビッチの動画をあらゆるプラットフォームで数多く持っている。僕からすれば父親が入手した動画がアドバンテージにはなるなんてことはない」
 
 最近は観戦に訪れたファンが選手の練習動画をSNSに多々アップするケースが増えていることに加え、大会によっては各プレーヤーのヒッティング練習をライブ配信しているところもある。そのため一見するとアルカラスの父親の行動を咎める必要性はないように思えるかもしれない。

 だが、冒頭でも述べたようにアオランギ・パークでの練習は基本的に非公開となっている。いくら父親といっても選手のチームメンバーではない人物が勝手にそれを撮影したとなれば、不適切な行動とみなされても致し方ないだろう。

 ちなみにジョコビッチは一連の騒動についてまだコメントを出していないものの、今週初めに応じたセルビア報道陣の取材で練習風景が簡単に拡散されてしまうことに言及したという。「練習を容易に見られることで対戦相手に有利な状況が作られてしまいかねない。選手のプライバシーを大切に考えてほしい」と述べたうえでこう続けた。

「みんなが肩越しに、自分が何に取り組んでいるのかを見ている。全てのショットが分析・測定され、評価されている。そのせいで試したいことや特定の練習ができないと感じることもある。プライバシーが確保されていれば、新しいことを試したり、チームと明確にコミュニケーションを取ったりすることができると思う」

 おそらくジョコビッチは選手同士が少しでも公平な状況下で対戦できるように求めているのだろう。思わぬところでフェアプレーが失われかねないことを各大会が心しておく必要があるかもしれない。

文●中村光佑

【画像】ウインブルドン2023で存在感を放つアルカラスやジョコビッチら男子選手