今年６月末に現役生活を終えた男子テニス元世界ランク12位のフェリシアーノ・ロペス氏（スペイン）がイギリスのスポーツメディア『Sky Sports』のインタビューに登場。凄まじい活躍を見せている20歳のカルロス・アルカラス（スペイン／世界ランク１位）を大いに称賛しつつも、「彼を“偉大な選手”と呼ぶのはまだ早い」と冷静な見方を示した。

　抜群のテニスセンスでファンを魅了し続けているアルカラスの勢いはとどまるところを知らない。昨年９月の全米オープンで悲願のグランドスラム（四大大会）初優勝を飾った彼は、今シーズンも２月のアルゼンチン・オープン（ATP250）における復帰戦優勝を皮切りに、多くのケガに見舞われながらも勝利を積み重ねてきた。

　そして先日のウインブルドンでは芝コートでの経験が浅い中で勝ち上がり、決勝では大会４連覇中だったノバク・ジョコビッチ（セルビア／２位）にフルセットで勝利。殊勲の四大大会２勝目を手に入れるとともに、2002年大会のレイトン・ヒューイット（オーストラリア／元世界１位）以来、ビッグ４（フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マリー）以外が頂点に立つという21年ぶりの快挙も成し遂げた。

　プロ転向からまだ５年のアルカラスが見せるポテンシャルの高さには、同胞のロペス氏も驚きを隠せない様子だ。ロペス氏はアルカラスがすでに完成されたプレーヤーだと評したうえでこう続けた。

「カルロス（アルカラス）には全ての要素が備わっている。ナダルのメンタルの強さ、ナダルとジョコビッチのフィットネスとテニスの技術。そして先を読む力やその他多くの点でフェデラーとも似ている」
  　さらにアルカラスの活躍はスペインテニス界にとっても本当に喜ばしく幸せなことだと、長年男子ツアーを盛り上げてきたロペス氏は語る。一方で同氏はアルカラスが20歳とまだ若いことから、「カルロスを偉大な選手と称するのは時期尚早だ」とも発言。これについては以下のように説明した。

「カルロスがすでに成し遂げてきたこと全てを考慮すれば、彼は偉大な選手の１人だと言えるかもしれないが、その一方でそれを言うのはまだ早すぎる。例えば15回のグランドスラム優勝はどうだろうか？ 彼がどこまで行けるかはわからないが、今の彼の年齢を踏まえても、そこまで到達するのは非常に難しいことだ。我々は皆、腰を落ち着けて彼のプレーを楽しまなければならない」

　まだまだキャリアが長く続くであろうアルカラスはどこまで進化を続けるのか。いずれは誰にも止められない最強の選手になるかもしれない。ロペス氏の言葉通り、それをじっくりと待ちたいものだ。

文●中村光佑

【PHOTO】アルカラス、ジョコビッチらウインブルドン2023で熱戦を繰り広げた男子選手たち