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海外テニス

全米OP1回戦、島袋将が試合巧者ガストンとの敗戦で手にした課題「どれだけ本戦で自分を出していけるか考えていきたい」<SMASH>

内田暁

2023.08.30

試合序盤から積極的に攻めてくるガストンに、自分のペースがつかめなかった島袋。「ウインブルドンでの経験を生かせなかった」と悔しい敗戦となった。(C)Getty Images

試合序盤から積極的に攻めてくるガストンに、自分のペースがつかめなかった島袋。「ウインブルドンでの経験を生かせなかった」と悔しい敗戦となった。(C)Getty Images

「リズムに乗れなかった。リズムをつかませてもらえなかった。そこは本当に、相手が試合巧者だったなと思います」

 悔しさをかみ殺すように、彼は誠実に言葉を絞り出す。

 どこか乗り切れない。流れを作らせてもらえない。

 一本気な人柄を投影するような島袋将のテニスにとって、勢いや潮流は勝利に不可欠な要素。そのリズムを、ウーゴ・ガストンは端から壊しにかかっているようだった。

 今大会は予選から参戦したガストンだが、1年前には58位にいた実力者。小柄ながら、左腕から七色のショットを繰り出す天才肌な選手である。

 そのガストンと初戦で戦うにあたり、島袋の脳裏には、予選2回戦で清水悠太と戦う彼の姿が強く残っていただろう。この時のガストンは、ポイント間の時間をたっぷり取り、自身と似た才能を持つ清水相手に、緩急を用い長く目まぐるしいラリー戦を繰り広げた。その試合を見ていた島袋が、ガストンとのマッチアップでは「自分から仕掛ける展開が多くなるかな」と思っていたのは、自然なことだろう。

 ところが蓋を開けてみたら、開始直後から早い展開で仕掛けるのはガストンの方。序盤は、トレードマークのドロップショットをほとんど打つことなく、徹底して強打で押してきた。清水戦では、あれほどショットクロックぎりぎりまで時間を使った彼が、ボールキッズをも急かせながら、矢継ぎ早に次々とサービスを打ち込んでくる。
 
 立ち上がり、緊張ゆえの硬さもあった島袋は、このガストンのペースについていけない。経験の少ないナイトマッチのため、「ボールが見えにくかった」ことも焦りに拍車をかけた。

 試合開始からわずか52分で、2セットを奪われる島袋。ようやく環境にも慣れた第3セットでは、腰を据えた打ち合いから前に詰める、“らしい”テニスで互角の攻防を繰り広げるも、遅きに失した感はいなめない。タイブレークではリードする場面もあったが、セットを奪うには一歩及ばず。2-6、1-6、6-7(4)での悔しい敗戦となった。

 予選を突破してのグランドスラム本戦出場は、先のウインブルドンに続き2度目。

「ウインブルドンでの経験を生かせなかった」と本人は唇を噛むが、かような試合巧者との対戦も、カクテル光線煌めくなかでのナイトセッションも、そしてビールの臭いと雑踏入り混じる混沌も、この場に立ったからこそ得られた掛け替えのない経験だ。

「予選を勝ち上がるだけでなく、どれだけ本戦で自分のパフォーマンスを出していけるかを、考えていきたい」と彼は言う。

 初のニューヨークから持ち帰ったこの課題の解は、きっと近く見つけられるはずだ。

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】島袋将のジャックナイフ、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
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