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全米混合ダブルス4強入りの柴原瑛菜!今大会で現役引退のストリコワに終止符を打つ「7年前の試合はよく覚えています」<SMASH>

内田暁

2023.09.06

柴原(右)は7年前、グランドスラム初出場の初戦でストリコワ(左)にストレートで敗退。それから月日が経ちトップ選手に成長した柴原は、全米の準々決勝でリベンジを果たした。(C)Getty Images

 渾身のリターンが相手のボレーを弾くのを見届けると、柴原瑛菜は両手を突き上げ、ネット際で、対戦相手と固く抱擁を交わした。

 やや長く言葉を掛けていたようにも見えたが、「Congratulations(おめでとう)と言うのが精一杯でした」と、やや恥ずかしそうに打ち明ける。

 テニス四大大会「全米オープン」混合ダブルスの準々決勝。柴原/パビッチ組が対戦したのは、バルボラ・ストリコワ/ゴンザレス組。

 単複、そして混合ダブルスにも出場していたストリコワにとって、この混合ダブルスが今大会で最後まで残っていた試合。そして38歳のいぶし銀選手にとって、これがキャリア最後の試合ともなった。

 柴原にとってストリコワは、特別な選手でもあるはずだ。

 柴原が初めてグランドスラムに出場したのは、18歳の日。当時の彼女はアメリカ国籍の高校生の時だった。

 地元ロサンゼルスの一般の高校に通っていた当時の柴原は、国際大会の経験は少なく、ランキングも当然低い。その彼女が全米オープン本戦のダブルスに出られたのは、『USTAナショナル選手権18歳以下』を制し、ワイルドカード(主催者推薦枠)を得たためだった。

 初めて立つ、グランドスラムの大舞台。その初戦で当たったのが、第7シードのミルザ/ストリコワ組である。

 結果は、3-6、2-6の敗戦。それでも、最後の夏休みの最中にいた高校生は、「ちゃんと戦えていると感じた。自分たちのミスが多かったので、もっと練習すればもっとチャンスはあった」と、大きな手応え得た様子だった。
 
 果たして、同大会のジュニア部門にも出場した柴原とパートナーのジェーダ・ハートは、手応えを力に変えて、頂点へと駆け上がる。その時点で既に、カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)進学が決まっていた柴原だが、この一連の経験によりプロへの決意を固めただろう。

「大学でフィジカルを鍛えることもできるし、レベルの高い試合をたくさんできる。場合によっては、大学を休学してのプロ転向も視野に入れている」

 18歳は希望に胸を満たし、顔中に笑みを広げていた。

 それから、7年――。柴原はダブルスのトッププレーヤーに成長し、あの頃「いつか立ちたい」と言っていたグランドスラム決勝の舞台にも立った。

 ただ、青山修子と組んだ今大会の女子ダブルスでは、初戦で敗退。相手はワイルドカードで出場した、17歳と18歳の地元ジュニア選手だった。

 上位選手相手に失うものなく伸び伸びと向かってくる若い相手に、柴原は「初めて出場した時の自分を見ているよう」と、幾分の郷愁をまとう。

 そして、奇しくもと言うべきか。混合ダブルスでは、あの時に目の前に立ちはだかり、プロの壁と同時に自身の可能性にも気付かせてくれたストリコワのキャリアに、柴原が終止符を打った。

「7年前の試合のことはよく覚えています。ストリコワが、どのボールも全部取ってやるという気迫を出していて、本当にどんなボールも返された」

 笑顔で回想する彼女は、「今日も変わらず。ボレーは本当にうまい」と素直な賛辞を口にした。

 まるで7年前の自分に今を射影し、変わりゆく立場の陰陽を映し出したかのような、今年の柴原の全米オープン。

 それはもしかしたら彼女のキャリアにおける、一つのターニングポイントになるかもしれない。

現地取材・文●内田暁

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