「総合的に考えた時、正しい選択だったと思う」

　東レ パン パシフィック オープンテニス（東レPPO）は初出場、そして来日は２年前の東京オリンピック以来２度目のイガ・シフィオンテクは、今大会の出場理由をそう述べた。

　彼女が言う「正しい選択」の内訳には、先週、メキシコのグアダラハラ開催大会をスキップしたことも含まれる。自らのソーシャルメディアに掲載した同大会欠場理由には「自身のスケジュールを見直した結果」だとも記されていた。

　このグアダラハラから東京へとつながるスケジュールに関しては、すでに多くの議論や異論が勃発している。今季最後の全米オープンが米国東海岸で閉幕したその翌週、西海岸のサンディエゴでWTA500が開催。続いて、グランドスラムに次ぐグレードのWTA1000がグアダラハラで行なわれ、間髪あけずに東京でWTA500の東レPPOが開かれる…。

　選手たちにとっては、付与されるランキングポイントの多さを考慮すればいずれも出場したい大会。だがグアダラハラから東京への移動は、アメリカでの乗り継ぎが必須で、どんなに急いでも半日以上は掛かる。しかもグアダラハラと東京の時差は、東京が15時間先行。上位進出すればするほどに、スケジュールが厳しくなるのは明白だ。

　当初はグアダラハラにも出場予定だったシフィオンテクが、同大会の欠場を決めたのは、全米オープンが終わった数日後だったという。
  「全米オープンが終わった時には、精神的にも本当に疲れていた。それに家（ポーランド）に戻った時には、技術面でもいくつか習得したり磨きたいことがあったので、練習コートでしっかり時間を費やす必要があると感じた」

　一息でそう語る世界２位は、さらにこうも続ける。

「今になって思えば、本当に良い決断をしたと思う。実際に何人かの選手たちは、グアダラハラで終盤まで勝ち残り、大変な思いをして東京まで移動しているのだから。シーズンの終盤に来て、グアダラハラと東京の両大会で良いプレーをするのは、本当に難しいと思う」

　ここでシフィオンテクが語るように、グアダラハラでは東レPPO出場予定のマリア・サッカリが優勝、カロリーヌ・ガルシアはベスト４に進出。その両選手への救済処置として、今大会では“パフォーマンス・バイ”という初戦免除ルールが適応された。だが結果、初戦免除の恩恵からはじき出される形となったエレーナ・ルバキナが、“体調不良”を理由に大会を欠場するという、やや後味の悪い展開を招いてもいる。

　なお、冒頭に記したシフィオンテクの「総合的」を構成する要素は、単にスケジュール面だけでもない。

「東京に戻ってこられて、すごくワクワクしているの。だってオリンピックの時は、東京観光をしたり、町を味わう時間もなかったから。それに私のコーチは、アグニエシュカ・ラドワンスカのコーチとして東京では素晴らしい結果を残したし、だからこの町が好きなの！」
　
　あらゆる要素が、正しい方向を指している――そんな予感を胸に、“女子テニス界の顔”が有明のコートへと向かう。

取材・文●内田暁

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