魂込めたリターンに気圧されたように、相手の返球がネットを叩くと、彼はその場に大の字に倒れた。1年前、初めて出場したグランドスラム(テニス四大大会)の予選にして、本戦出場を果たした快進撃の始まりの地。そのウインブルドン予選2回戦で、島袋将が、エスパー・デヨング(オランダ)から7-6(3)、4-6、7-6(8)大逆転勝利を手にした。
「プロになって初めて、これだけの壁にぶち当たって。正直、自分のテニスも見失いかけていた時もあった」
今季の6カ月を振り返り、島袋が率直に打ち明ける。149位で迎えた今季はATP(男子プロテニス協会)ツアー予選に積極的に挑戦したが、勝てない時が続いた。ATPチャレンジャー(下部大会)でも、3回戦が最高戦績。
「勝てるだろうと思っていた相手にも負け、自信を失っていた。勝つのが普通と思ってしまったのが、大きな誤りだった」
そう彼は振り返った。
そんな島袋にとって、自信と自分のテニスを取り戻すきっかけとなったのが、芝のコートだった。3週前のサービトンチャレンジャー(イギリス)では、初戦で67位のエミル・ルースブオリ(フィンランド)にストレートで快勝。
続くノッティンガム・チャレンジャーでも、39位で元トップ10ランカーのキャメロン・ノーリー(イギリス)相手に、フルセットの接戦を演じた。前に出る勇気が報われる芝のコートで、島袋は、1年前の良い感覚を取り戻しつつあった。
今回のウインブルドン予選2回戦では、それら経て来た苦闘の経験と、上昇の機運が合致した。セット取り合い迎えたファイナルセットでは、今季、フルセットで7戦全敗の事実が脳裏をよぎる。そしてだからこそ、彼は「この試合を乗り越える」と自分に誓ったという。
「ファイナルセットのゲームカウント4-4で向こうにブレークポイントがあった時、勝ちたいのはもちろんですが、それ以上に『ここを乗り越えたい』っていう気持ちがすごく前面に出たんです」
サービスを軸に前に出て、まずはこの危機を切り抜ける。
そうして、駆け込んだ10ポイントタイブレーク――。相手のサービスと強打に押され、追い込まれた3-8の危機。ただ退路を断たれ逆に心が決まったかのように、島袋は果敢に前に出続ける。絶妙なドロップボレーを返されても、身体を投げ出し、ラケットの先に引っ掛けるようにボレーを返して、8-8に追いついた。
「3-8の崖っぷちの状態で、何か作戦を立てるとかは難しかった。緊張した場面では、ストロークよりも、芝ではどんどん前に出てプレッシャーかけた方が有利。どんなポイントだったかは正直覚えてないんですが、チャンスがあったらすぐ前に出ようと思っていた」
その「自分のプレー」を貫いた末に到達した、歓喜の勝利だった。
これで本戦まで、あと一勝。現地時間27日の11時に、エリアス・イーマー(スウェーデン)と予選決勝を戦う。
「今日(2回戦)は、最後まで自分を信じ切れたことが、勝ちにつながったのかなと思います。予選決勝につなげることができたのはもちろん、競った試合をこうやって勝てたことは、すごく大きなステップだったなと思います」
自分を信じる一層の根拠を獲得し、子どもの頃から憧れた"聖地"を目指す。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】島袋将のジャックナイフ、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
【関連記事】初の四大大会予選で決勝に進んだ島袋将を支える"チーム"の存在。「自己投資した分は絶対戻ってくる」という信念
【関連記事】兵庫チャレンジャー準優勝の島袋将が身体作りのため今季終了。来季に向け「ツアーに定着できる選手になりたい」と意気込み
「プロになって初めて、これだけの壁にぶち当たって。正直、自分のテニスも見失いかけていた時もあった」
今季の6カ月を振り返り、島袋が率直に打ち明ける。149位で迎えた今季はATP(男子プロテニス協会)ツアー予選に積極的に挑戦したが、勝てない時が続いた。ATPチャレンジャー(下部大会)でも、3回戦が最高戦績。
「勝てるだろうと思っていた相手にも負け、自信を失っていた。勝つのが普通と思ってしまったのが、大きな誤りだった」
そう彼は振り返った。
そんな島袋にとって、自信と自分のテニスを取り戻すきっかけとなったのが、芝のコートだった。3週前のサービトンチャレンジャー(イギリス)では、初戦で67位のエミル・ルースブオリ(フィンランド)にストレートで快勝。
続くノッティンガム・チャレンジャーでも、39位で元トップ10ランカーのキャメロン・ノーリー(イギリス)相手に、フルセットの接戦を演じた。前に出る勇気が報われる芝のコートで、島袋は、1年前の良い感覚を取り戻しつつあった。
今回のウインブルドン予選2回戦では、それら経て来た苦闘の経験と、上昇の機運が合致した。セット取り合い迎えたファイナルセットでは、今季、フルセットで7戦全敗の事実が脳裏をよぎる。そしてだからこそ、彼は「この試合を乗り越える」と自分に誓ったという。
「ファイナルセットのゲームカウント4-4で向こうにブレークポイントがあった時、勝ちたいのはもちろんですが、それ以上に『ここを乗り越えたい』っていう気持ちがすごく前面に出たんです」
サービスを軸に前に出て、まずはこの危機を切り抜ける。
そうして、駆け込んだ10ポイントタイブレーク――。相手のサービスと強打に押され、追い込まれた3-8の危機。ただ退路を断たれ逆に心が決まったかのように、島袋は果敢に前に出続ける。絶妙なドロップボレーを返されても、身体を投げ出し、ラケットの先に引っ掛けるようにボレーを返して、8-8に追いついた。
「3-8の崖っぷちの状態で、何か作戦を立てるとかは難しかった。緊張した場面では、ストロークよりも、芝ではどんどん前に出てプレッシャーかけた方が有利。どんなポイントだったかは正直覚えてないんですが、チャンスがあったらすぐ前に出ようと思っていた」
その「自分のプレー」を貫いた末に到達した、歓喜の勝利だった。
これで本戦まで、あと一勝。現地時間27日の11時に、エリアス・イーマー(スウェーデン)と予選決勝を戦う。
「今日(2回戦)は、最後まで自分を信じ切れたことが、勝ちにつながったのかなと思います。予選決勝につなげることができたのはもちろん、競った試合をこうやって勝てたことは、すごく大きなステップだったなと思います」
自分を信じる一層の根拠を獲得し、子どもの頃から憧れた"聖地"を目指す。
現地取材・文●内田暁
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