海外テニス

全豪2回戦で惜敗の内島萌夏、次期女王と称される17歳アンドレーワと明暗を分けた“経験の差”<SMASH>

内田暁

2025.01.16

第14シードのアンドレーワ(左)を相手にサービングフォーザマッチまで追い詰めた内島(右)だが、要所を取り切れず。惜しくも敗北を喫した。(C)Getty Images

 現在オーストラリア・メルボルンで開催中のテニス四大大会「全豪オープン」は1月15日、男女2回戦が行なわれた。

 初戦でフルセットの大熱戦を制した内島萌夏は、第14シードのミラ・アンドレーワと対戦。ファイナルセットで常にゲーム先行し、最後のタイブレークでも勝利まで2ポイントに迫ったものの、4-6、6-3、6-7(8)で惜敗した。

「経験」という言葉の概念や定義は、なかなかに難しいところがあるかもしれない。

 大坂なおみは18歳の時、「真に良い選手にとって経験は関係ない」と言い、ビクトリア・アザレンカも若き日に「経験は過大評価されている」と明言した。

 一方でノバク・ジョコビッチはかつて、"ビッグ4"と呼ばれた面々が30代になっても強い理由……特に四大大会で圧倒的な支配力を誇る理由を「厳しい戦いを潜り抜けてきた経験にある」と断言していた。

 アンドレーワはまだ17歳ながら、世界15位の大会第14シード。今回が8度目の四大大会本戦で、昨年の全仏ベスト4の彼女には、満員のアリーナで接戦や死闘を繰り広げた経験がある。

 とりわけ、彼女が今大会の2回戦で内島と対戦した"コート3"は、昨年の3回戦で、ファイナルセット1-5のダウンから大逆転勝利を演じた舞台。本人は「呪いのコート」と苦笑するが、それはむしろ、対戦する相手に掛かる呪いだろう。実際に内島は、「彼女が去年もあのコートで、ファイナルセット1-5からまくったのは、見ていました」と言った。
 
 もっとも、大舞台で戦った多くの「経験」があるということは、それだけ他者の目に触れる機会も多いということだ。内島は当然ながら、次期女王と呼ばれる17歳の情報を多く持っていた。

「走れて、しぶとい選手というのはわかっていた。意外にループなどを使い、長いラリーが好きな選手というのも知っていたので、長くなることは覚悟してました」

 その上で内島は、「攻撃的にいきつつ、時々ループなども混ぜながらプレーしようと思っていた」と言う。

 実際にその策が奏功していることも、感じることができていた。「彼女も途中からイライラして、結構ミスもしてくれた」ことも、内島の目は捉えていた。

 対するアンドレーワは、「相手をあまり知らなかった」ことを認める。

「情報の少ない選手との対戦は、いつだって難しい。私は今日の相手と対戦したこともないし、練習したこともなかった。彼女はとても良いプレーをしたし、私はミスが多かった」

 その情報の少なさに加え、「すごくフォアハンドの良い選手」という驚きが、彼女の焦りを生んだかもしれない。
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内島が語るアンドレーワとの「経験の差」