海外テニス

29歳のキーズを全豪決勝に導いた“テニスおたく”の伴侶と“道具箱”の中身…「今のラケットを手にした瞬間、恋に落ちた感覚になった」<SMASH>

内田暁

2025.01.25

道具には無頓着だったキーズだが、夫の助言でラケットやストリングを変えたとたん、好成績を連発!「自分のプレーへの自信が深まった」と言う。(C)Getty Images

 大変失礼ではあるが、今年の全豪オープンテニスが始まる前、女子シングルスでのマディソン・キーズの決勝進出を予想した人が、果たしてどれほどいただろうか?

 現在29歳、世界ランク14位だが、シード順は19。過去にグランドスラム決勝進出の経験はあるものの、それも7年以上前のことだ。

 ただ予兆は、幾つかあった。1つは、前哨戦のアデレード大会での優勝。しかも破った5人の選手は全てトップ30で、うち2人はトップ10。この大会を取材していた記者は、「アデレードでの彼女は、ボールを以前よりもクリーンに、強烈に打っていた」と話していた。

 さらには米国テニスジャーナリストのベン・ローゼンバーグ氏は、大会2週目の時点で『Keys unlocks her toolshed(キーズが道具箱の鍵を開ける)』と題した長い取材記事を掲載。彼女が開けた"道具箱"の中に入っていたのは、新たなラケットとストリングだったという。
 
 14歳の頃から"神童"と呼ばれたキーズは、昨年11月、長年付き合ってきたビヨン・フラタンジェロと籍を入れた。31歳のフラタンジェロもまた、将来を嘱望されたかつてのトップジュニア。ただ1年半ほど前に、事実上の競技生活には幕を引き、キーズのコーチとして活動し始めていた。

 このコーチにして伴侶を、キーズは愛情を込めて"テニスおたく"と称する。米国男子選手としては小柄だったフラタンジェロは、戦術や用具などあらゆる要素にこだわり、勝利への活路を見いだしてきたのかもしれない。

 いずれにしても、「自分は用具のことはまったくわからない」とあっけらかんと認めるキーズは、夫がテニス中継を見ながら「彼女が使っているラケットは...」などと解説を始めても、ちんぷんかんぷん。そんな伴侶をフラタンジェロは、「もっと色んなラケットやストリングを試すべきだ」と、辛抱強く説得したという。

 昨年末、キーズがそれらの助言を聞き入れたのは、ケガに悩まされていたことも大きかったようだ。キーズが、振り返る。
 
NEXT
PAGE
キーズが手にした新たな“相棒”