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海外テニス

「がんばって打ちました!」変幻自在のテニスで伊藤あおいがWTA1000の「カタール・オープン」予選突破!<SMASH>

内田暁

2025.02.09

四大大会に次ぐグレードを誇るWTA1000カテゴリーの「カタール・オープン」の本戦入りを決めて笑顔を見せる伊藤あおい。写真:内田暁

四大大会に次ぐグレードを誇るWTA1000カテゴリーの「カタール・オープン」の本戦入りを決めて笑顔を見せる伊藤あおい。写真:内田暁

 2年前に立てた“予定”では、彼女は今年、日本で成人式(20歳を祝う集い)を迎えているはずだった。

「いつも年末は、タイの大会に出ていたんです。だから一昨年から、『20歳の年は絶対に日本にいる!』って言い続けていたのですが……」

 現実とはままならぬもので、今年の1月、彼女は地元の市民会館ではなく、オーストラリアのメルボルン・パークにいた。二十歳を祝う集いの代わりに、出ていたのは全豪オープンテニスの予選。

「さすがに全豪に出られるってなったら、そっち行くしかなくなっちゃいまして……成人式はいけなくなっちゃいましたね」

 そう言い伊藤あおいは、ペロリと舌でも出しそうな表情で、いたずらっぽく笑った。

 初めて挑んだグランドスラム(四大大会)の予選では、よりにもよって、中学生時代からのライバルで友人の石井さやかと、一回戦で当たるアンラッキードロー。その試合に負けた後は、一端帰国し2週間弱日本に滞在した後に、「シンガポール・オープン」(シンガポール/WTA250)、「アブダビ・オープン(UAE・アブダビ/WTA500)、「カタール・オープン」(カタール・ドーハ/WTA1000)、そして「ドバイ・テニス選手権」(UAE・ドバイ/WTA1000)へと続く長期遠征に旅立った。

 その遠征も、連敗スタート。予選とはいえ対戦したのは、シンガポールがジェン・サイサイで、アブダビがソフィア・ケニンという、経験豊かな実力たちだ。

「1回戦から、“ラスボス”きてる感じなんですけど」

 ゲーム好きの伊藤あおいが、彼女らしい比喩で悦明する。
 
「普通は、ステージがどんどん上がり、四天王とか倒しながら城に向かっていく感じじゃないですか。それが予選の初戦から、トップ100の選手と対戦するので」

 もっとも伊藤のテニスの特性からすると、この表現は言い得て妙だろう。「トレーニングしない、アップもあまりしない」と公言する彼女にとっては、試合こそが最高の練習。実戦を重ねて環境に慣れ、自分のレベルを上げながら、よりハイランクの選手と戦うのが理想だからだ。

 さらに知性派の伊藤らしく、負けた2試合にも本人納得の理由がある。まずシンガポールで当たったジェン・サイサイは、ケガでランキングを落としてはいるが、元シングルス38位、ダブルス15位の総合力の高い選手。

「サイサイさんはダブルスプレーヤーでもあるので、ボレーがきれいで崩すのが難しくて。私、ダブルスプレーヤーが結構苦手なんです。足元に打っても、ダブルスのうまい選手はチョンって返してくるし、スマッシュも決定力が高いので、すごくやり辛いんです」
 
 なるほど。

「あとはシンガポールはインドアで。私も風は嫌いなんですが、外的要因が無さすぎると、相手も崩れない。イレギュラーが無い、風がない、全くミスらない選手という三要素が揃ってしまった。そんな安定感の勝負になったら、このレベルだと確実に負けるということが分かってしまいまして」

 それが、伊藤の解析だ。
 
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