私は「KASA(カサ)」というペンネームで活動している漫画家です。テニス漫画『BREAK BACK』(ブレークバック)という作品を月刊誌で連載しています。
そんな私が、今話題の伊藤あおい選手(世界ランキング112位)を知り、興味を持ったのは2年前。「変わった選手」がいるという噂をテニス関係者から聞いたからです。
そこで記憶に強く残ったワードが「ノーウォーミングアップ」と「ノートレーニング」でした。「え?そんな選手いるの?」と驚き、しかもそれでテニスが強いと聞いて、その日を境に伊藤あおいウォッチャーになりました(笑)。
そして、漫画家としての権力(?)を使い、マルチタスクで苦しむ担当編集者に、伊藤選手との対談企画を打診。それが通り、『月刊少年チャンピオン』での対談が実現しました。
対談は2時間半に及び、伊藤選手からたくさんのお話を聞くことができました。そこで今回、私が感じたことや考察を含め、ここでまとめたいと思います。
【伊藤あおい選手の特異なテニスについて】
■どう主導権を握るか――
多くの選手の場合、ボールのスピードや回転、テンポなどの「ショットの威力」で主導権を握ろうと考えますが、伊藤選手の場合は「相手の能力をいかに下げて主導権を握るか」を考えているように試合を観て感じました。もちろんその視点で他の選手も考えてはいますが、伊藤選手の場合はそれが根底にあると言いうか、その比重が振り切っているように見えました。
それは技術の根本的な考え方にも繋がります。
「出力を出す」ことが目的の技術と、「相手に読まれない」「相手の虚をつく」という目的の技術では、最適運動が異なります。伊藤選手のフォームや技術が特質なのは、後者の目的で結果的に作られたものだからではないかと。実際、伊藤選手が自分の技術をうまく言語化できないのもそこに繋がるのかと思います。
■論理的な配球術
伊藤あおい選手との対談の冒頭で、「フォア(ハンド)の順クロス、ほぼ打たないですよね?」と聞くと、「クロスに打って勝てるなら打ちますよ」と返答がありました。そこで、感覚的に配球をしているのではなく、物凄く論理的に配球を考えている選手だと、確信を持ちました。
ベーシックなテニスの基本は、クロスで主導権を握ってストレートに展開ですが、伊藤選手はクロスをほぼ打たず、ムーンボールのストレートが基本。さらにその基本のストレートとアングルを混ぜることで、相手にストレートを読まれないようにしています。この使い方が異常にうまいのです。
基本のクロスの打ち合いだと、ショットの威力勝負になりやすく、伊藤選手はストレートに展開することで戦況を複雑化する。威力勝負ではなく、武器であるテクニック、展開力、予測の勝負に持ち込んでいく。それが、伊藤選手のテニスの面白さだと個人的に思っています。
そんな私が、今話題の伊藤あおい選手(世界ランキング112位)を知り、興味を持ったのは2年前。「変わった選手」がいるという噂をテニス関係者から聞いたからです。
そこで記憶に強く残ったワードが「ノーウォーミングアップ」と「ノートレーニング」でした。「え?そんな選手いるの?」と驚き、しかもそれでテニスが強いと聞いて、その日を境に伊藤あおいウォッチャーになりました(笑)。
そして、漫画家としての権力(?)を使い、マルチタスクで苦しむ担当編集者に、伊藤選手との対談企画を打診。それが通り、『月刊少年チャンピオン』での対談が実現しました。
対談は2時間半に及び、伊藤選手からたくさんのお話を聞くことができました。そこで今回、私が感じたことや考察を含め、ここでまとめたいと思います。
【伊藤あおい選手の特異なテニスについて】
■どう主導権を握るか――
多くの選手の場合、ボールのスピードや回転、テンポなどの「ショットの威力」で主導権を握ろうと考えますが、伊藤選手の場合は「相手の能力をいかに下げて主導権を握るか」を考えているように試合を観て感じました。もちろんその視点で他の選手も考えてはいますが、伊藤選手の場合はそれが根底にあると言いうか、その比重が振り切っているように見えました。
それは技術の根本的な考え方にも繋がります。
「出力を出す」ことが目的の技術と、「相手に読まれない」「相手の虚をつく」という目的の技術では、最適運動が異なります。伊藤選手のフォームや技術が特質なのは、後者の目的で結果的に作られたものだからではないかと。実際、伊藤選手が自分の技術をうまく言語化できないのもそこに繋がるのかと思います。
■論理的な配球術
伊藤あおい選手との対談の冒頭で、「フォア(ハンド)の順クロス、ほぼ打たないですよね?」と聞くと、「クロスに打って勝てるなら打ちますよ」と返答がありました。そこで、感覚的に配球をしているのではなく、物凄く論理的に配球を考えている選手だと、確信を持ちました。
ベーシックなテニスの基本は、クロスで主導権を握ってストレートに展開ですが、伊藤選手はクロスをほぼ打たず、ムーンボールのストレートが基本。さらにその基本のストレートとアングルを混ぜることで、相手にストレートを読まれないようにしています。この使い方が異常にうまいのです。
基本のクロスの打ち合いだと、ショットの威力勝負になりやすく、伊藤選手はストレートに展開することで戦況を複雑化する。威力勝負ではなく、武器であるテクニック、展開力、予測の勝負に持ち込んでいく。それが、伊藤選手のテニスの面白さだと個人的に思っています。