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国内テニス

テニスの常識が通用しない伊藤あおい、その型破りな魅力をテニス漫画家KASA氏が徹底分析「人生について考えさせらた」<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.03.16

一般的には試合時間が迫ってくるとウォームアップに入るが、伊藤選手の場合は控室で漫画を読んだり絵を描いたりして過ごすことがあるというから驚きだ。写真:THE DIGEST写真部

一般的には試合時間が迫ってくるとウォームアップに入るが、伊藤選手の場合は控室で漫画を読んだり絵を描いたりして過ごすことがあるというから驚きだ。写真:THE DIGEST写真部

■強いメンタルの秘訣は余裕

「自分の強さはメンタル」と語った伊藤選手。具体的にメンタルとは何ですかと聞くと、「余裕です」とすぐに答えてくれました。最初、私には全く意味がわからず、具体的に余裕とは何か、と聞き返すと驚きの返答がありました。

 要約すると「テニスに対しての熱」や「勝ちたい」という気持ちが、今この瞬間の勝負においては邪魔になる。「勝ちたい」と強く思えば、思うほど、身体は硬直し、思考や選択に制限がかかるというわけです。

 伊藤選手には「テニスは人生の一部」という哲学が根本にあって、他の選手よりも「余裕」があると、そのようなニュアンスで伊藤選手が自己分析し、言語化したことに正直驚きました。

 私自身はその話を聞きながら、天才勝負師と言われた「雀鬼(麻雀の鬼)」こと桜井章一さんの似た勝負哲学を感じました。奇しくも、伊藤選手が最近、麻雀を始め、それがとにかく強いとテニス界で噂になっていて、私の中でその繋がりを興味深く感じました。
 
■ノーウォーミングアップ

 ある試合では試合直前までiPad(アイパッド)で絵を描いていたのは有名な話で、伊藤あおい選手はノーウォーミングアップがデフォルト(標準)なのです。ただ、アスリートとしてそれはどうなのか――。いったいどんな考え方なのかを聞きました。

 その返答を要約すると、伊藤あおい選手の「テニスは人生の一部」という哲学にも通じるのですが「自然体」であることを第一に考えているようです。

 私のダメな例で解説します。私は試合の時だけ、練習の時よりも入念にウォーミングアップをして、いつもやらない試合のプランを入念にしていました。「普段」とは違うルーティンをして、試合が「特別」なものになって、結果的に緊張する(笑)。身体や頭のウォーミングアップはできていても、メンタルという観点ではダメでした。

 伊藤選手にとって「ウォーミングアップをしない」というのは、試合を平常時の日常にするための一つのやり方のなのかもしれないと、対談後に気づきました。人によっては、ある程度の緊張感があった方が良いパフォーマンスが出る選手もいたりするので、それが正しいということではなく、あくまでも一つのやり方、考え方なのだと思います。
 
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