男子テニスのITFツアー“大学シリーズ”が国内で連続開催されている。3月17日からは「TeamREC・早稲田大学インターナショナルテニスオープン」(M15)が東京・早大東伏見コートで行なわれ、23日にシングルス決勝を実施。第5シードのチョン・ヒョン(韓国)が第2シードの熊坂拓哉を6-4、6-0で下し、優勝を飾った。
ITFツアーはATPツアーやATPチャレンジャーの下部ツアーに当たり、特に賞金総額15,000ドル大会は最も低いグレードとあって、世界を目指す若手の登竜門やベテランの再起の場に位置付けられる。日本では毎年3月から大学主催のITFツアーが組まれ、今年も亜細亜大、早稲田大、筑波大と3週続けて開催されている。
早大オープンでは昨年、卒業生のプロ白石光が優勝を果たし、今年もベスト4まで進出。しかし準決勝では元世界ランキング19位のチョンと対戦し、白石らしい引き出しの多い攻めを見せたものの、相手の粘り強いディフェンスに2-6、2-6で跳ね返され、連覇を阻まれた。
決勝はそのチョンと、準決勝でナム・ジソン(韓国)をフルセットで下した熊坂の顔合わせ。亜大出身の26歳、熊坂は昨年ITF初タイトルを手にし、現在の世界ランクは542位。一方、故障からの復活途上にあるチョンは676位と今はランクを落としているが、そのポテンシャルはやはり高かった。
まさしく鉄壁のようなディフェンスを誇るチョンは、熊坂の振り回しに対してベースラインぎりぎりへの返球やコーナーへのカウンターで切り返し、崩れない。「とにかくボールが深い。中途半端に動かすと逆襲される」という熊坂は、いきなりサービスを2連続でブレークされ0-3とされる。
そこで熊坂はロングラリーを避け戦術を変更。「メリハリをつけ、行くところは攻撃するようにシンプルに迷いなく行った」ことが奏功し、第4ゲームをブレークバックすると、そこからは互角の展開に。ネットにも積極的に出てキープを続け、4-6と第1セットは食い下がった。
第2セットに入ると「向こうに余裕ができてプレーの質が上がり、取り切れなかった」と言うように、0-6で引き離されたが、内容的には熊坂も十分に成長を感じさせるテニスを披露した。
優勝したチョンは長くケガに苦しみ、これが復帰後ではITFツアー2勝目となった。チョンと言えば2018年全豪オープンでノバク・ジョコビッチ(セルビア)らを破ってベスト4入りし、最高19位まで上り詰めたアジアの星である。しかし20年に腰を痛めて約2年間ツアーを離脱し、ランキングを失った。
手術を受けて23年に本格復帰するも結果が出ず、再び1年間休養。昨年秋に再復帰し、今年1月にバリのM25で優勝、早大大会の前週には中国のM25で準優勝と、ようやく調子を取り戻しつつある。「コートに戻って試合できるのがうれしい。今回優勝できたことも純粋にうれしい」という言葉にも実感がこもる。
今後の目標を問うと「今は特に設定していない。大きすぎる目標を掲げて、自分にプレッシャーをかけたくはない。一つひとつ、いいテニスを重ねていきたい」とチョン。これまでの苦労の大きさを感じさせるような重いコメントだった。チョンはまだ28歳、時間はいくらでもある。少しずつ階段を上り、自分のテニスを取り戻していってほしい。
◆シングルス決勝結果(23日開催)
〇チョン・ヒョン(韓国)【5】 6-4 6-0 熊坂拓哉(イカイ)【2】●
◆ダブルス決勝結果(22日開催)
〇ナム・ジソン/上杉海斗(韓国/江崎グリコ)【1】 6-3 6-1 楠原悠介/中川舜祐(伊予銀行)【2】●
※【 】内の数字はシード順位
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
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ITFツアーはATPツアーやATPチャレンジャーの下部ツアーに当たり、特に賞金総額15,000ドル大会は最も低いグレードとあって、世界を目指す若手の登竜門やベテランの再起の場に位置付けられる。日本では毎年3月から大学主催のITFツアーが組まれ、今年も亜細亜大、早稲田大、筑波大と3週続けて開催されている。
早大オープンでは昨年、卒業生のプロ白石光が優勝を果たし、今年もベスト4まで進出。しかし準決勝では元世界ランキング19位のチョンと対戦し、白石らしい引き出しの多い攻めを見せたものの、相手の粘り強いディフェンスに2-6、2-6で跳ね返され、連覇を阻まれた。
決勝はそのチョンと、準決勝でナム・ジソン(韓国)をフルセットで下した熊坂の顔合わせ。亜大出身の26歳、熊坂は昨年ITF初タイトルを手にし、現在の世界ランクは542位。一方、故障からの復活途上にあるチョンは676位と今はランクを落としているが、そのポテンシャルはやはり高かった。
まさしく鉄壁のようなディフェンスを誇るチョンは、熊坂の振り回しに対してベースラインぎりぎりへの返球やコーナーへのカウンターで切り返し、崩れない。「とにかくボールが深い。中途半端に動かすと逆襲される」という熊坂は、いきなりサービスを2連続でブレークされ0-3とされる。
そこで熊坂はロングラリーを避け戦術を変更。「メリハリをつけ、行くところは攻撃するようにシンプルに迷いなく行った」ことが奏功し、第4ゲームをブレークバックすると、そこからは互角の展開に。ネットにも積極的に出てキープを続け、4-6と第1セットは食い下がった。
第2セットに入ると「向こうに余裕ができてプレーの質が上がり、取り切れなかった」と言うように、0-6で引き離されたが、内容的には熊坂も十分に成長を感じさせるテニスを披露した。
優勝したチョンは長くケガに苦しみ、これが復帰後ではITFツアー2勝目となった。チョンと言えば2018年全豪オープンでノバク・ジョコビッチ(セルビア)らを破ってベスト4入りし、最高19位まで上り詰めたアジアの星である。しかし20年に腰を痛めて約2年間ツアーを離脱し、ランキングを失った。
手術を受けて23年に本格復帰するも結果が出ず、再び1年間休養。昨年秋に再復帰し、今年1月にバリのM25で優勝、早大大会の前週には中国のM25で準優勝と、ようやく調子を取り戻しつつある。「コートに戻って試合できるのがうれしい。今回優勝できたことも純粋にうれしい」という言葉にも実感がこもる。
今後の目標を問うと「今は特に設定していない。大きすぎる目標を掲げて、自分にプレッシャーをかけたくはない。一つひとつ、いいテニスを重ねていきたい」とチョン。これまでの苦労の大きさを感じさせるような重いコメントだった。チョンはまだ28歳、時間はいくらでもある。少しずつ階段を上り、自分のテニスを取り戻していってほしい。
◆シングルス決勝結果(23日開催)
〇チョン・ヒョン(韓国)【5】 6-4 6-0 熊坂拓哉(イカイ)【2】●
◆ダブルス決勝結果(22日開催)
〇ナム・ジソン/上杉海斗(韓国/江崎グリコ)【1】 6-3 6-1 楠原悠介/中川舜祐(伊予銀行)【2】●
※【 】内の数字はシード順位
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
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