海外テニス

3カ月ぶりに戦線復帰の王者シナーに世界7位のルードが完敗!「彼のプレーはほぼ完璧だった」と脱帽<SMASH>

中村光佑

2025.05.16

3カ月のブランクを感じさせないシナー(左)の前に完敗を喫したルード(右)であったが、どこかで若き王者の戦線復帰を喜んでいるようでもあった。(C)Getty Images

 現在開催中の男子テニスツアー公式戦「イタリア国際」(5月7日~18日/イタリア・ローマ/クレーコート/ATP1000)は現地15日にシングルス準々決勝を行ない、ツアー屈指のクレーコーターである元世界ランキング2位のキャスパー・ルード(ノルウェー/現7位)が23歳の若き王者ヤニック・シナー(イタリア/同1位)に0-6、1-6でまさかの完敗。試合後のインタビューでルードは「相手が強すぎた」と素直に勝者を称えた。

 前週開催の「マドリード・オープン」で四大大会に次ぐマスターズ1000シリーズでの初優勝を遂げ、今大会も順調に勝ち上がってきた26歳のルード。そんな彼が「試合をしたい」と切望していたのが、今回のイタリア国際でドーピング違反による約3カ月の出場停止処分から復帰した世界1位のシナーだ。

 男子ツアー内で物議を醸したシナーのドーピング問題。選手たちの間では処分の軽さに対する批判的な意見が飛び交った中、シナーを一貫して擁護してきたのが26歳のルードだった。ローマ開幕前にも「彼がたくさんの声援を受けてコートに戻ってきてくれることを願っている」と、シナーへの応援メッセージを口にしていたのは既報の通りだ。

 両者の4度目の対決(ここまではルードの0勝3敗)が実現した準々決勝は、予想外にも一方的な展開となった。マドリードからマッチ9連勝と好調を維持していたルードだったが、立ち上がりからエンジン全開で攻めてくるシナーを止められず、1ゲームも奪えないまま第1セットを献上。第2セットも第3ゲーム以外は全てブレークされ、わずか64分でベスト4進出と2大会連続のマスターズ優勝を逃した。
 
 試合後には「ファンや観客に長時間の接戦の試合を見せたかった」と悔しさを滲ませたルード。一方で圧巻のパフォーマンスを見せたシナーを称えるしかないと潔く負けを認めている。特にシナーのブランク明けとは思えない強烈なショットには為す術がなかったと振り返った。

「自分の良いショットに対して、相手はさらに良いショットで返してきた。自分はそれ以上のショットで返すことができなかった。それが今日の試合の全てだった。少なくともプレーヤーとして対戦した中では、彼のプレーはほぼ完璧だった。素直に称賛するしかない」

「最初の4ゲームは、彼がフォアハンドで攻めにいってミスをした時もあったけど、それ以外はフォアハンドもバックハンドも、彼が繰り出す全てのショットが、100マイル(約160km/h)以上のスピードで飛んできた感じだった。自分も時々重いショットを打てていたけど、それも全て打ち返された。本当にすごいと思う。それ以上は何も言えない。まるで100マイルのボールを打ち続けてくる壁と戦っているようだった」

 四大大会3勝目を手にした今年1月の全豪オープンを含め、出場停止前に戦った直近6大会のうち5大会で優勝を飾るなど凄まじい活躍を見せていたシナーには、もはやブランクは関係ないのかもしれない。若き王者の類まれなる強さに、ルードもただ天を仰ぐしかなかった。

文●中村光佑

【動画】ルードが完敗を認めたシナーとの「イタリア国際」準々決勝ハイライト

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