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海外テニス

「彼らが強いうちに勝ちたい」全豪準優勝のティームは、トップ3の立ちはだかる厚い壁に風穴を開けられるか?

内田暁

2020.02.03

ジョコビッチをあと一歩のところまで追いつめたティームだったが、最後の最後で経験値の差が表れた。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

ジョコビッチをあと一歩のところまで追いつめたティームだったが、最後の最後で経験値の差が表れた。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 勝負事に「もし」が禁物だというのは、広く語られる言説だ。

 それでも「もし、生まれていた時代が違ったら……」との仮設は、現在を生きる多くのトップのテニス選手たち……とりわけ20代後半から30代前半の選手やその関係者、あるいはファンなら、一度は問うた歴史の「if」だろう。

 ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、そしてノバク・ジョコビッチ――。

 先の全豪オープンをジョコビッチが制したことにより、この3人のグランドスラム制覇数は、合計56に達した。さらに、ここにアンディ・マリーとスタン・ワウリンカを加えれば、2004年から今年の全豪までのグランドスラム65大会中、先述の5選手が61タイトルを独占していることになる。この5名以外でグランドスラム優勝経験を持つ現役選手は、マリン・チリッチとホアン・マルティン・デルポトロの2人だけ。他の選手たちが生まれた時代を悔いたとしても、誰も責めはしないだろう。
 
 ドミニク・ティームも、時代の巡り合わせに最も泣かされた選手の1人だ。頭角を現し始めたのは2014年。翌年に3つのツアータイトルを獲得し、16年には4度優勝しトップ10入りも果たした。なお、16年終了時点で獲得した7のツアータイトルのうち、5大会がクレー。赤土のスペシャリストというのが、当時の彼が得ていた評価だろう。

 そしてここに、彼のもう1つの不運がある。言うまでもなく、ティームが得手とするそのフィールドには、“キング・オブ・クレー”の異名を取るナダルがいることだ。6回出場した全仏オープンのうち、ティームがナダルに敗れたのは実に4度。そのうち2度は決勝で、1つは準決勝での顔合わせである。ちなみに、初めて準決勝に勝ち進んだ2016年で、快進撃を止められた相手はジョコビッチ。ただ翌17年、そして昨年の全仏では、ティームはジョコビッチを破っている。
 
「僕ら若い世代は、とてもタフな時代にいる。優勝するためには常に、信じがたい“レジェンド”たちを倒さなくてはいけないのだから」

 今年の全豪オープン準々決勝でナダルとの激闘を制し、準決勝では4歳年少のアレクサンダー・ズベレフを破ったティームは、自身の不運を少しばかり嘆くかのような言葉を口にした。死闘続きの彼を決勝で待ち受けるのは、1セットしか落とさず決勝に勝ち上がったジョコビッチ。7度の全豪優勝記録を持つ、メルボルン・パークの帝王だ。
 
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