女子テニス協会(WTA)が、選手のヘルスケアに関する先進的な取り組みを公式サイトで紹介している。
賞金額の男女格差への抗議からWTA設立に至った『オリジナル9』のビジョンに根ざし、WTAは以前から選手の健康を重視してきた。単にケガの治療やコンディショニングのサポートだけでなく、妊娠や出産など女性アスリートの特有の課題にも、プロテクトランキング制度や健康保険、理学療法士などで解決策を提供。
さらに2022年、医療機器大手ホロジック社との提携がスタートし、翌年に『ホロジック×WTA女性健康対策チーム(Hologic WTA Women’s Health Taskforce)』が発足。WTAのヘルスケアの取り組みは、「予防を重視」し、「女性特有の健康ニーズに特化」し、「選手の声を中心に据える」という点で従来のアスリートケアと大きく異なる内容となっている。
例えば、カナダのダブルスプレーヤー、ガブリエラ・ダブロウスキーは、この体制による乳がん検診で異変を早期に発見し、病気を乗り越えることができた。ダブロウスキーは米経済メディア『フォーブス』の取材に応え、当時の手厚いサポートを振り返っている。
「もし我慢して放置していたら、今の私はなかったかもしれない。それに、彼らは単にチェックボックスにマークしただけではありません。専門家やカウンセラー、さらには化学療法中の栄養面でも支えてくれる人がいて、まるで家族全員が私を支えてくれているようでした」
アメリカのジェシカ・ペグラもWTAのヘルスケア体制を高く評価する。
「世界最高レベルの女性専門クリニックに通っているような感覚です。たった一度のセッションで、ホルモンレベル、骨の健康、そして長期的な不妊治療の選択肢について、これまで何年も個別に通って学んだことよりも多くのことを学ぶことができました。テニスだけでなく、女性としての将来についても、明確なビジョンを持つことができました」
WTAによる、女性アスリートの健康を最優先にした医療モデルの意義はどこにあるのか。チーフ・メディカル・オフィサーのキャスリーン・ストロイア氏はこう語る。
「男性のために設計されたシステムをただ流用する時代は終わりました。研究に基づき目的を持って構築し、女性スポーツが女性の健康に投資することで何が実現できるかを示しています」
選手のヘルスケアは、競技中だけでなくキャリア全体や引退後も視野に入れた継続的な支援へと拡大。これまで女性アスリートの社会的地位向上を牽引してきたWTAの健康支援モデルは、アスリートケアの在り方に一石を投じている。
構成●スマッシュ編集部
【画像】乳がんと戦いながらパリ五輪の混合複で銅メダルを獲得したダブロウスキーほか、テニス競技のメダリストたち
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賞金額の男女格差への抗議からWTA設立に至った『オリジナル9』のビジョンに根ざし、WTAは以前から選手の健康を重視してきた。単にケガの治療やコンディショニングのサポートだけでなく、妊娠や出産など女性アスリートの特有の課題にも、プロテクトランキング制度や健康保険、理学療法士などで解決策を提供。
さらに2022年、医療機器大手ホロジック社との提携がスタートし、翌年に『ホロジック×WTA女性健康対策チーム(Hologic WTA Women’s Health Taskforce)』が発足。WTAのヘルスケアの取り組みは、「予防を重視」し、「女性特有の健康ニーズに特化」し、「選手の声を中心に据える」という点で従来のアスリートケアと大きく異なる内容となっている。
例えば、カナダのダブルスプレーヤー、ガブリエラ・ダブロウスキーは、この体制による乳がん検診で異変を早期に発見し、病気を乗り越えることができた。ダブロウスキーは米経済メディア『フォーブス』の取材に応え、当時の手厚いサポートを振り返っている。
「もし我慢して放置していたら、今の私はなかったかもしれない。それに、彼らは単にチェックボックスにマークしただけではありません。専門家やカウンセラー、さらには化学療法中の栄養面でも支えてくれる人がいて、まるで家族全員が私を支えてくれているようでした」
アメリカのジェシカ・ペグラもWTAのヘルスケア体制を高く評価する。
「世界最高レベルの女性専門クリニックに通っているような感覚です。たった一度のセッションで、ホルモンレベル、骨の健康、そして長期的な不妊治療の選択肢について、これまで何年も個別に通って学んだことよりも多くのことを学ぶことができました。テニスだけでなく、女性としての将来についても、明確なビジョンを持つことができました」
WTAによる、女性アスリートの健康を最優先にした医療モデルの意義はどこにあるのか。チーフ・メディカル・オフィサーのキャスリーン・ストロイア氏はこう語る。
「男性のために設計されたシステムをただ流用する時代は終わりました。研究に基づき目的を持って構築し、女性スポーツが女性の健康に投資することで何が実現できるかを示しています」
選手のヘルスケアは、競技中だけでなくキャリア全体や引退後も視野に入れた継続的な支援へと拡大。これまで女性アスリートの社会的地位向上を牽引してきたWTAの健康支援モデルは、アスリートケアの在り方に一石を投じている。
構成●スマッシュ編集部
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