昨年12月に男子テニスのアレックス・デミノー（オーストラリア／世界ランク12位）と婚約した女子39位のケイティ・ボールター（イギリス）が、英公共放送『BBC』のインタビューに応じ、これまでに数々の誹謗中傷メッセージを受け取ってきたことを明かした。

　WTA（女子テニス協会）とITF（国際テニス連盟）が先日発表した報告書によると、テニス界では選手に対するSNS上の誹謗中傷が深刻化しており、特に賭博に関連した投稿が顕著であることが明らかになった。

　調査は外部機関「Signify」の脅威分析システム「Threat Matrix」により、2024年のデータを基に実施。その結果、4,200ものSNSアカウントから8,000件以上の暴力的または脅迫的な投稿・コメントが確認され、全体で458人の選手が標的となっていたことが判明。とりわけ誹謗中傷の約26％が特定の５人の選手に集中していたという。

　誹謗中傷の約40％は賭けに負けたギャンブラーによるものであり、特に悪質な10のアカウントのうち９つは凍結や投稿削除などが実施された他、それらを含む計39のアカウント情報が関係機関に共有され、追加の対応が進められている。

　さらに28人の選手に対して“懸念すべきやりとり”が56件発生しており、そのうち77％が賭博関連と見られている。別途、15件の悪質な脅迫については証拠が法執行機関に提出され、FBI（連邦捜査局）などの機関が捜査中だという。
  　話をボールターに戻すと、彼女はこれまでに受け取った数々の誹謗中傷メッセージの実例を公表。中には「ガンになればいいのに」といった身体的な不幸を願うものや、「お前の祖母の墓を壊す。明日までに死んでなければな」など、家族を脅かす内容もあったそうだ。

　またある時には「地獄に落ちろ。母親から送ってもらった金をお前のせいで失った」と、賭けの失敗を逆恨みするメッセージも送られてきたという。さらに２回戦敗退を喫した先日の四大大会「全仏オープン」期間中にも家族への中傷を受けたと告白した。

　今週出場している「ノッティンガム・オープン」（６月16日～22日／イギリス・ノッティンガム／芝／WTA250）でも「お前が会場から出た時に襲ってやる」との脅迫を受けたというボールターだが、これについては送信者が実際に現地に来ていたことが後に判明し、大会関係者によって即座に退場処分となったとのことだ。

　最近では婚約者のデミノーに絡めた誹謗中傷も多くなっているとボールター。そうした現状を受けて彼女は恐怖心をこう吐露する。「私たち選手がそうした投稿にいかに無防備であるかを物語っていると思う。誹謗中傷をする人物が現場にいるのか、または自宅の場所を知っているのか、本当にわからない」

　本来、選手に注がれるべきは敬意と応援の声であるはずだ。しかし実際には、賭けの失敗を逆恨みした心ない言葉があふれている。選手の尊厳と安全を守るためにも、テニス界全体でこの問題に向き合う必要がある。

文●中村光佑

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