海外テニス

「何も通用しない」と世界5位のフリッツを失望させた、若き支配者アルカラスの圧倒的な強さ<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.06.27

アルカラス(右)とは過去2度対戦していずれもストレート負けを喫しているフリッツ(左)だが、そうした状況は自身の意欲をかき立ててもいる(写真は2024年レーバーカップ)。(C)Getty Images

 男子テニス界の勢力図が新たに塗り替えられようとしているなか、ヤニック・シナー(イタリア/世界ランキング1位)とカルロス・アルカラス(スペイン/同2位)の名前は、"若き支配者"として刻まれつつある。

 その存在感を誰よりも強く感じているひとりが、アメリカのテイラー・フリッツ(同5位)だろう。シナーより4つ、アルカラスより5つ年上の27歳は、昨年の全米オープンで自身初のグランドスラム決勝に進出。しかしシナーに敗れ、いまだ四大大会では無冠にとどまっている。

 英紙『ガーディアン』のインタビューに応じたフリッツは、両雄のうち「より手強い相手」を問われると、迷わず答えた。

「カルロスは僕にとって、より手強い相手だと思う。でも一つ注意すべきは、僕たちが去年のレーバーカップ(欧州選抜対世界選抜による団体戦)で対戦した時、彼は"絶好調バージョン"だった点だ。まるで何も通用しないように感じた」

 これまでアルカラスとの2戦では、まだ1セットも奪えていない。2023年のマイアミでは4-6、2-6で、昨年のレーバーカップでは2-6、5-7で敗戦。

 一方、シナーとは2021年から5度対戦し、初戦を制したものの、その後は4連敗を喫している。

「もちろんシナーには何度も、わりとあっさりやられてきたけど、少なくとも自分もテニスができていると感じていた。レーバーカップでのカルロスとの戦いでは、試合の8割から9割の間、何もできないような気がしていた」
 
 ここ数年で男子ツアーの様相は大きく変わった。主要タイトルを独占してきたビッグ3のロジャー・フェデラーが2022年に引退し、ラファエル・ナダルもケガに苦しんだ末に昨年ラケットを置いた。さらにノバク・ジョコビッチの出場大会数が減少し、一時は覇権の行方が不透明になっていた。フリッツは当時をこう振り返る。

「2022年から2023年にかけて、フェデラーが引退し、ラファ(ナダル)やノバク(ジョコビッチ)が多くの大会に出場していなかった時期にギャップを経験した。カルロスは良いプレーをしていたけど、まだ確立された存在ではなかったし、シナーもまだ完全ではなかった。あの1年間は何が起こってもおかしくないように感じた。今は、アルカラスとシナーがある種の支配を見せているように思える」

 そのうえで、両者の台頭が自身の意欲をかき立てていることも明かした。

「でも、それが僕をさらに成長させようという気持ちにさせてくれるんだ」

 クレーコートシーズンの不調から一転、フリッツは芝コート初戦の「ボス・オープン」(ドイツ・シュツットガルト)でアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/同3位)を下して今季初優勝を飾った。第5シードとして臨む今年の「ウインブルドン」でも、初の栄冠を虎視眈々と狙っている。

構成●スマッシュ編集部

【動画】フリッツがアルカラスの強さを痛感した2024年の「レーバーカップ」試合ハイライト

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