“グリゴール・ディミトロフ”というテニスプレーヤーは、その時々で幾つかの通り名を持ち、異なるイメージを人々に想起させる人物だろう。
ジュニア時代の彼は、ファンや関係者から“ベビー・フェデラー”のニックネームを与えられ、 “次代の世界1位”だと目されてきた。説明は不要だろうが、ここで言う“フェデラー”は、史上最高の選手の一人と謳われる、ロジャー・フェデラー。流麗な片手バックハンドに代表されるディミトロフのプレーが、彼の幼少期からのアイドルに似ていることから、つけられたものだ。
華麗なる女性遍歴も、彼の名が『タブロイド紙』等を飾った理由。セレナ・ウイリアムズとの仲が噂され、マリア・シャラポワとの交際と顛末は、彼女の自伝でも詳細に記されたほど。その後、シンガー・ソングライター/女優のニコール・シャーシンガーとの“歳の差デート”も話題になった。
若さと才能と、華やかさの象徴のようだったそのディミトロフも、今年で34歳を迎える。現在のランキングは、21位。最高位は、2017年11月に達した3位。昨年春には、当時世界2位のカルロス・アルカラスらを破り、260週ぶりにトップ10へと復活する。これはATP史上3番目で長い、「返り咲きに要した時間」記録でもある。
個人的には最近、錦織圭が「スライスを効果的に使っている選手」として、ディミトロフの名をあげたことが印象に残る。昨年末、錦織は日本のトップジュニアたちに、次のように助言していた。
「スライスは、今のうちに練習しておいた方が良いよ。パワーのある選手と対戦する時に有効。ディミトロフが、あの年齢になってもアルカラスらと互角に渡り合えるのは、スライスがあるのが大きい」
今季のディミトロフは、内転筋などのケガに苦しめられ、全豪オープン、そして全仏オープンでも1回戦途中での棄権を強いられた。ただ現在開催中のウインブルドンでは、初戦で西岡良仁に快勝。2回戦でも、ファンを沸かすスーパープレーを連発し、コランタン・ムーテに勝利している。
そのディミトロフに、前述の錦織のコメントを伝えると、彼は柔和な笑みを広げて「それはうれしいね」と言った。
「僕と圭は同じ時代を過ごし、共に成長してきた仲間だと感じている。
スライスについては、僕がいつも思っているのは、ショットや戦術のバリエーションこそが、相手のゲームを“乱す”カギになるということ。いつの時代だって選手たちは、新しい何かを試そうとしている。でも、何年もかけて確立した自分のプレーを変えるのは、ものすごく難しい。誰しも、自分の“コンフォートゾーン(快適な領域)”を超えてプレーするのは嫌なものだ。
だからこそ、若い選手でもベテランでも、その重要性を理解した上で、新しいことに取り組む必要がある。相手が(ヤニック・)シナーでもアルカラスでも、何かしら相手のリズムを崩す手段が必要になる。スライスだったり、サーブ&ボレーだったり、相手の逆を突くコースに打つことだったりね。“相手にとって不快なことを、自分が快適にやる”ことが大切だと思う」
ジュニア時代の彼は、ファンや関係者から“ベビー・フェデラー”のニックネームを与えられ、 “次代の世界1位”だと目されてきた。説明は不要だろうが、ここで言う“フェデラー”は、史上最高の選手の一人と謳われる、ロジャー・フェデラー。流麗な片手バックハンドに代表されるディミトロフのプレーが、彼の幼少期からのアイドルに似ていることから、つけられたものだ。
華麗なる女性遍歴も、彼の名が『タブロイド紙』等を飾った理由。セレナ・ウイリアムズとの仲が噂され、マリア・シャラポワとの交際と顛末は、彼女の自伝でも詳細に記されたほど。その後、シンガー・ソングライター/女優のニコール・シャーシンガーとの“歳の差デート”も話題になった。
若さと才能と、華やかさの象徴のようだったそのディミトロフも、今年で34歳を迎える。現在のランキングは、21位。最高位は、2017年11月に達した3位。昨年春には、当時世界2位のカルロス・アルカラスらを破り、260週ぶりにトップ10へと復活する。これはATP史上3番目で長い、「返り咲きに要した時間」記録でもある。
個人的には最近、錦織圭が「スライスを効果的に使っている選手」として、ディミトロフの名をあげたことが印象に残る。昨年末、錦織は日本のトップジュニアたちに、次のように助言していた。
「スライスは、今のうちに練習しておいた方が良いよ。パワーのある選手と対戦する時に有効。ディミトロフが、あの年齢になってもアルカラスらと互角に渡り合えるのは、スライスがあるのが大きい」
今季のディミトロフは、内転筋などのケガに苦しめられ、全豪オープン、そして全仏オープンでも1回戦途中での棄権を強いられた。ただ現在開催中のウインブルドンでは、初戦で西岡良仁に快勝。2回戦でも、ファンを沸かすスーパープレーを連発し、コランタン・ムーテに勝利している。
そのディミトロフに、前述の錦織のコメントを伝えると、彼は柔和な笑みを広げて「それはうれしいね」と言った。
「僕と圭は同じ時代を過ごし、共に成長してきた仲間だと感じている。
スライスについては、僕がいつも思っているのは、ショットや戦術のバリエーションこそが、相手のゲームを“乱す”カギになるということ。いつの時代だって選手たちは、新しい何かを試そうとしている。でも、何年もかけて確立した自分のプレーを変えるのは、ものすごく難しい。誰しも、自分の“コンフォートゾーン(快適な領域)”を超えてプレーするのは嫌なものだ。
だからこそ、若い選手でもベテランでも、その重要性を理解した上で、新しいことに取り組む必要がある。相手が(ヤニック・)シナーでもアルカラスでも、何かしら相手のリズムを崩す手段が必要になる。スライスだったり、サーブ&ボレーだったり、相手の逆を突くコースに打つことだったりね。“相手にとって不快なことを、自分が快適にやる”ことが大切だと思う」