７月24日に更新した公式SNSで、今年６月初めに自身のチームに招聘したゴラン・イバニセビッチ氏（クロアチア／53歳）とのコーチ契約をわずか１カ月半で解消したと発表した元世界ランキング３位のステファノス・チチパス（ギリシャ／26歳／現29位）。『UBITENNIS』など複数の海外メディアによると、彼は昨年８月頃に関係が悪化したとされる父親で元コーチのアポストロス氏を再招聘する見込みだという。

　イバニセビッチ氏もその選択が悩める26歳にとっては最善だと語る。同氏はクロアチアメディア『HRT』の取材で「彼（チチパス）は父親と一緒に再び挑戦することを決意した」と明かし、次のようにコメントした。

「彼を指導できるのは父親しかいない。彼は父親とのタッグで最高のテニスをしてきたし、事実父親が彼を一番よく理解していると思う。今回の契約終了は“家族のプロジェクト”の一環で、ベストな決断だったと思うし、彼の成功を心から願っている。彼は今のランキングにいるのが信じられないほど優れた選手だからね。先日僕は彼にこう告げたんだ。『頭の中を整理しない限り、現状は何も変わらない』とね」

　短期間での契約終了には、両者の間に大きなわだかまりがあったのではないかとの憶測が絶えない。今年２月の「ドバイ選手権」（ATP500）を制して以降成績が振るわないチチパスに、イバニセビッチ氏が「彼の状態はひどく、あれほど準備不足な選手は見たことがない」と率直な物言いで苦言を呈していたことが理由だ。対するチチパスもギリシャメディア『SDNA』に対し、「自分のことを悪く言う指導者と一緒に仕事はできないと感じた」と明かしていた。
  　しかしこれについてイバニセビッチ氏は「報道が必要以上に誇張されている」とし、「お互いに恨みはなく、離別の際はお互いに感謝を伝え合った」と強調。あえて上記の厳しい言葉をかけたことについてはこう説明している。

「彼を侮辱したかったわけではない。陰で言ったのではなく、全て直接言ったよ。今はもう何かを言うだけで騒ぎになる世の中になってしまったようだね。僕は彼がどう反応するかを見たくて、正直にそう言った。残念だが、今の選手は厳しいことを言われるのに慣れていない。みんなそれをわかっているし、彼自身もそう感じているみたいだ」

　その上で「ツアーで戦うにはメンタルが整っていることが特に重要で、それができていなければ何時間もトップ選手たちと戦うのは不可能」とし、「ウインブルドンでの彼はメンタル面での準備ができていなかった」と明言。それでも最後には「自分の道を見出してくれることを願っている。彼のこれまでの実績を見ればわかる通り、自分のプレーを忘れたわけではないからね」と再起を期す26歳へ期待の言葉を口にした。

　今年４月初めの段階では８位につけていたランキングも現在は29位まで順位を落としているチチパス。幼少期から二人三脚で歩んできたかけがえのない父親と共に再浮上のきっかけをつかめるか注目しよう。

文●中村光佑

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